トヨタは厳しくなる一方の燃費規制にどう対応するのか?キーマンに聞く
「社内にハイブリッドの技術があるから次期『プリウス』で目標燃費を達成できる」(嵯峨専務役員)
トヨタ自動車専務役員ユニットセンタープレジデント・嵯峨宏英氏
―世界各地での規制強化を、どう受け止めていますか。
「大変厳しい。いずれそういう時代がくるとはわかっていたが、この1、2年で新興国を含めて具体的な数値を要求するステージに入ってきた。従来にも増して緊張感を持って具体的な対策を決める必要がある」
―特にどのあたりが厳しいのでしょうか。
「多様化するお客さまの要望に応え、かつ燃費とも闘わなければならない点だ。例えばプラグインハイブリッド車(PHV)。(環境対策車として)『我々が考えるベスト』と主張しても、顧客には簡単には選んでもらえない」
―トヨタにとっての課題はなんでしょうか。
「トヨタはトラックから小さいクルマまで全方位で展開している。一方で、一部の(カテゴリーの)商品しかないメーカーもある。そういう企業と競争した結果、局所的にはトヨタは遅れていると見える車種もある。それを克服していかねばならない。(ターボと組み合わせて出力を維持しつつエンジン排気量を下げる)ダウンサイジングターボエンジンやクリーンディーゼルエンジンなど個々の要素技術は持っている。経営資源に限度がある中で、多くの車種にどう展開していくかが最大の課題だ」
―燃費向上に向けて軸となる戦略は。
「(パワートレーンの)基本を良くすることだ。そこはブレずに一番エネルギーを注いでいる。(設計改革)『TNGA』でエンジンを切り替えるタイミングなので、そこで燃費を1段も2段も引っ張り上げる。それをベースに通常ガソリン車はもちろん、ハイブリッド車(HV)、ターボ車などにも展開する。次期自動変速機(AT)・無段変速機(CVT)も、ある程度の手動変速機(MT)より高いレベルの伝達効率を開発ターゲットにしている」
―競合と比較してトヨタのアドバンテージは。
「HVを20年近く展開し、機械と電気の融合の部分などはサプライヤーに頼まなくてもできる。他社はメガサプライヤーの技術を組み合わせている。トヨタは社内に技術がある分、他社より先に課題に気づき対処できる。だからHV『プリウス』次期モデルも(目標とする)燃費が達成でき、HVシステムのコストも予定通り半減できる」
―次世代の燃料電池車(FCV)の方向性は。
「一般論として(燃料電池システムの)小型化などいろいろな課題が挙げられている。トヨタとしては燃料電池の生産技術がボトルネック。そこをブレークスルーして価格を下げたい」
【記者の目/国ごとの対応迫られる】
トヨタは環境技術についてはハイブリッド車(HV)や電気自動車(HV)など全方位で開発している。しかし経営資源には限りがあり、マツダとの包括的提携などで他社技術の活用も進める。世界中で1000万台を売るトヨタは、各地の燃費規制の強化に伴い、極端に言えば国ごと、車種ごとにベストな対応が迫られる。優先順位を見誤れない難しい局面を迎える。
(聞き手=名古屋・伊藤研二)
―世界各地での規制強化を、どう受け止めていますか。
「大変厳しい。いずれそういう時代がくるとはわかっていたが、この1、2年で新興国を含めて具体的な数値を要求するステージに入ってきた。従来にも増して緊張感を持って具体的な対策を決める必要がある」
―特にどのあたりが厳しいのでしょうか。
「多様化するお客さまの要望に応え、かつ燃費とも闘わなければならない点だ。例えばプラグインハイブリッド車(PHV)。(環境対策車として)『我々が考えるベスト』と主張しても、顧客には簡単には選んでもらえない」
―トヨタにとっての課題はなんでしょうか。
「トヨタはトラックから小さいクルマまで全方位で展開している。一方で、一部の(カテゴリーの)商品しかないメーカーもある。そういう企業と競争した結果、局所的にはトヨタは遅れていると見える車種もある。それを克服していかねばならない。(ターボと組み合わせて出力を維持しつつエンジン排気量を下げる)ダウンサイジングターボエンジンやクリーンディーゼルエンジンなど個々の要素技術は持っている。経営資源に限度がある中で、多くの車種にどう展開していくかが最大の課題だ」
―燃費向上に向けて軸となる戦略は。
「(パワートレーンの)基本を良くすることだ。そこはブレずに一番エネルギーを注いでいる。(設計改革)『TNGA』でエンジンを切り替えるタイミングなので、そこで燃費を1段も2段も引っ張り上げる。それをベースに通常ガソリン車はもちろん、ハイブリッド車(HV)、ターボ車などにも展開する。次期自動変速機(AT)・無段変速機(CVT)も、ある程度の手動変速機(MT)より高いレベルの伝達効率を開発ターゲットにしている」
―競合と比較してトヨタのアドバンテージは。
「HVを20年近く展開し、機械と電気の融合の部分などはサプライヤーに頼まなくてもできる。他社はメガサプライヤーの技術を組み合わせている。トヨタは社内に技術がある分、他社より先に課題に気づき対処できる。だからHV『プリウス』次期モデルも(目標とする)燃費が達成でき、HVシステムのコストも予定通り半減できる」
―次世代の燃料電池車(FCV)の方向性は。
「一般論として(燃料電池システムの)小型化などいろいろな課題が挙げられている。トヨタとしては燃料電池の生産技術がボトルネック。そこをブレークスルーして価格を下げたい」
【記者の目/国ごとの対応迫られる】
トヨタは環境技術についてはハイブリッド車(HV)や電気自動車(HV)など全方位で開発している。しかし経営資源には限りがあり、マツダとの包括的提携などで他社技術の活用も進める。世界中で1000万台を売るトヨタは、各地の燃費規制の強化に伴い、極端に言えば国ごと、車種ごとにベストな対応が迫られる。優先順位を見誤れない難しい局面を迎える。
(聞き手=名古屋・伊藤研二)
日刊工業新聞2015年05月29日 自動車面