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ゴーン社長が1カ月前に語っていた経営者としてのゴール

「1位自体が目標ではない。だが1位になる可能性はある」
 社長兼CEO(最高経営責任者)からの退任を決めた日産自動車のカルロス・ゴーン氏。約1カ月前、日刊工業新聞とのロングインタビューの中で経営者のゴール、5年後、10年後のアライアンスの姿について語っている。

 -ゴーンさんの経営者としてのゴールは何ですか。
 「どのような経営者であれ、目標は持続可能性を実現することだ。会社と業績の持続可能性だ。会社の成長と利益と健全性を維持することが第一だ。二つ目の目標は、常にベストを目指すことだ。魅力ある車、サービスを魅力ある価格で提供する。通常はベストな人がサイズが大きい。いい仕事をしてない会社が業界をリードすることはなかなかない。1位自体が目標ではない。それは結果だ。いい仕事をしたからこそ結果的に1位になる。いい戦略と実行力あってこそだ」

 『私は1位になりたい』と言えるようなことではない。だが1位になる可能性はある。コスト、品質、技術、戦略で戦っている。今はトップ3のグループだ。フォルクスワーゲントヨタ自動車、当アライアンスで年販規模のわずかな差があるが、その差に意味はない。意味があるのはスケールだ。他のメーカーに対して、ハンディキャップを持たないことだ。スケールは利点だ。1位になることはうれしい。どうでもいいとは言わない。でも結果だ」

 -アライアンスのメンバーが増えると、各ブランドの個性維持とシナジー追求の両立が難しくなりませんか。
 「ルノーと日産の関係は17年間維持してきた。現時点でブランドが混同されることは全くない。お客様が比較検討をしないのだ。日本と米国は日産の存在感が高くルノーが低いから簡単だが、欧州は二つのブランドが存在して、きちんとブランドを確保している。混同されていない。重複もしていない」

 「ルノーと日産で証明してきたからこそ、三菱自でも証明できる。自信がある。だからこそ、三菱自がアイデンティティーを維持すると主張してきた。だから益子(修社長)さんに(社長に)残ってもらった。益子さんは三菱自のシンボルだ。混乱はない。社風もそのまま尊重しながら、ブランドの中身も変えない。シナジーを生み出すと言っているのは効率化によるシナジーだ。コストや投資の効率化、専門性の共有などだ。それでいて各ブランドは社風に応じて仕事をしていく。その条件があるからこそ、混乱のリスクを避けられる」

 -5年後、10年後のアライアンスの姿をどうイメージしますか。
「アライアンスが上にあって、主に共通の技術やプラットフォーム、サービス開発などをやりながら、各社がその下で、日産であれば『日産』『インフィニティ』『ダットサン』、ルノーであれば『ルノー』『ダチア』『ラーダ』、三菱自であれば『三菱』というブランドを持ち、ビジネスを中心に集中して取り組む。こんな形の仕組みになるだろう。各社は個別の会社として存続し、自立性を持って事業をする。それでいて基本的なビジネスの要素は共同開発をする」

 -さらに新しいメンバーを迎え入れられる余地はありますか。
 「出来ない理由はない。アライアンスのレベルでは共通化だ。下に各社がある。その数は三つでも四つでもいくらでもできる。数が多くても問題ない。もちろんマネジメントを担保しないといけないが。各社の足並みをそろえないといけない」
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(聞き手=池田勝敏)
日刊工業新聞2017年2月9日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
最近、ゴーン社長はずいぶん丸くなったな、と思う。頻繁に接しているわけではないので本当のところは分からないが。いい意味での「成熟」なのか。年齢的にはまだまだこれから経営の第一線でやっていけるが、長くなると自身も周囲もマンネリになる。会長として仕事の役割分担が実際にどうなるか見てみないと分からないが、違う地位や視点でマネジメントすることは悪くない。

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