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廃棄家電の金属から五輪メダルを作ることになったワケ

東京都が回収ボックス、携帯電話2000万台が必要
廃棄家電の金属から五輪メダルを作ることになったワケ

小池知事(中央)と足立工高の生徒ら

 携帯電話2000万台が必要―。東京都は16日、2020年東京五輪・パラリンピック大会で使う約5000個分のメダルを製作するための「携帯電話等小型電子機器回収ボックス」を都庁第2本庁舎1階に設置し、不要になった携帯電話などの回収を始めた。小池百合子知事は「“もったいない”の観点から大会参加意識を高めていくためにも回収協力ボックスに入れてください」と呼びかけた。
 
 回収するのは携帯電話のほか、デジタルカメラ、電卓、リモコンなど全9品目。金銀銅を取り出し、大会メダル用素材に活用する。集めた機器は大会組織委員会(森喜朗会長)が4月から実施する「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」に提供する。協力ボックスは小池知事が視察で訪れた東京都立足立工業高校のマシンクラフト部の生徒が製作した。

日刊工業新聞2017年2月17日



日本の技術を活用するよう提案していた


 リオデジャネイロ五輪・パラリンピックで熱戦が続く中、国内では2020年の東京大会に向けて、日本の技術を五輪・パラリンピックのレガシー(遺産)として活用する機運が研究者の間で高まっている。リサイクルの研究者は廃棄された家電製品から回収した金属によるメダル製造を、ロボットの研究者は災害対応ロボの聖火リレーへの活用を提案する。メダルの試作品作製や聖火台への点火のデモを通じて実現を目指している。

 リサイクル技術の研究者が集まるエコマテリアル・フォーラム(茨城県つくば市)は、産業廃棄物となった小型家電から回収した金や銀を使ってメダルを試作した。岩手県一関市など3市と連携し、再資源化した金属だけでメダルを製造し、選手に授与することを五輪大会組織委員会に提案している。市民には小型家電の提供を呼びかける考えだ。

 13年に施行された小型家電リサイクル法によって、使用済みの家電を収集する仕組みはすでにある。同フォーラムの原田幸明会長(物質・材料研究機構特命研究員)は「すべてのメダルを再資源化した金属で作製できる。自分が提供した携帯電話が、どの種目の金メダルになったかといった履歴追跡も不可能ではない」と話す。

 7月には東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の「アクション&レガシープラン2016」に盛り込まれた。一関市の勝部修市長は「実現に向けた大きな前進」と頬を緩める。大会を機に廃家電の収集率が向上すれば、貴金属だけでなく、レアメタル(希少金属)の再資源化でも採算がとれる可能性がある。

 一方、ロボット分野では災害対応ロボットの活用を促進するため、聖火の点火デモが行われた。早稲田大学の高西淳夫教授(ロボット学会会長)らが開発したロボットで、4本の脚で階段を登り、バルブを回すことや工具で穴を開けるなどの用途を想定する。災害対応ロボの開発事業を統括する東北大学の田所諭教授は「今後は実現に向けた運動を進めたい」と意気込む。

 災害対応ロボの実用化の課題は、ユーザーの育成。ユーザー自身のアイデアによって使い方を広げられれば、飛行ロボット(ドローン)のように市場が拡大する可能性を秘めているためだ。

 五輪の象徴的なイベントである聖火リレーにロボットを活用すれば日本の技術力を世界にアピールできるだけでなく、人間とロボットが共存する社会のシンボルとして世界に示せる。

 五輪は普段注目されていない技術に光を当てる絶好機となる。市民を巻き込みつつ技術の社会実装を加速させる取り組みが今後、期待される。
(文=小寺貴之)

日刊工業新聞2016年8月16日

昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
冒頭のニュースだけ見ると、「五輪委員会も粋なことするなー」とだけしか思いませんが、裏側では技術者たちが前々から提案していたのでした。

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