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素材産業、持続成長は可能か。トップに聞く次ぎの一手《#01》

JSR&日本ゼオン
素材産業、持続成長は可能か。トップに聞く次ぎの一手《#01》

化学プラントが集積する鹿島臨海工業地帯

 自動車や電機・電子部品のみならず、近年は環境対策やヘルスケア領域でも高付加価値製品・技術で独特な存在感を放つ素材産業。為替や新興国経済など外部環境が大きく変化する中、各社は持続的な成長に向けどんな道筋を描くのか。各社トップに次なる戦略を聞いた。

JSR・小柴満信社長「戦略投資に年250億円超」


JSR社長・小柴満信氏

 ―3月までの現中計は目標値の達成が難しそうです。次期中計の組み立てに影響は。
 「創業60年の節目を踏まえ、次の60年を見据えた計画にする。足元では市況に影響される石化系事業が最悪期を脱し回復の途上。例年は季節要因で減速する半導体・液晶ディスプレー材料も好調で、ライフサイエンスも伸びている。ここ6年でまいたタネも芽吹いてきた。売上高5000億円、営業利益500億円の当初目標は数年で届くはずだ」

 ―けん引役の一つに低燃費タイヤ用の合成ゴム(S―SBR)を位置付けました。
 「S―SBRの販売は当社だけで年率15%伸びており、タイヤ全体の成長率を10ポイントほど上回っている。特に環境規制が厳しい欧州で競争優位に立っていることは大きい。中国でようやく始まったラベリング制度も追い風。オールシーズンタイヤや耐摩耗性といった米国のニーズにも応えていけば、もう一段の事業拡大も視野に入る」

 ―11年以降に半導体材料やS―SBRを増強し、戦略投資は一段落した印象です。
 「しっかり差別化できる環境が整った。戦略投資は年間250億―350億円の従来水準に戻し、早期に売上高・利益に変えることに重きを置く。今後は半導体関連やライフサイエンス(生命科学)など必要な時、必要なところにM&A(合併・買収)を含んだ投資を繰り出す。収益性にもこだわり、撤退や他社との統合による事業の組み換えも進めたい」

日本ゼオン・田中公章社長「CNTなどで大型投資」


日本ゼオン社長・田中公章氏

 ―2020年度までに売上高を5000億円にする長期目標を掲げています。
 「そのために、4月から始める4カ年の次期中計を固めているところだ。ただ、現有の生産設備では増強後でもハードルが高い。さらに2000億円程度の投資が必要だろう。今の延長線上で取り組める事業に加え、C5留分関連製品などの新設備も検討する。25年度を視野に、まずは20年度に向けた成長戦略を仕上げていく」

 ―25年度を“終点”にすると、投資の自由度も増しますね。
 「投資が必要な案件は多いが、20年度までの短期では事業部は利益に縛られてしまう。これでは現有設備での売り上げ拡大やコストダウンといった計画にとどまりがちだ。だが25年度からさかのぼって考えれば、投資計画を描きやすい。カーボンナノチューブ(CNT)やリチウムイオン二次電池用バインダー(接着剤)など、事業拡大に寄与する大型投資を打ち出したい」

 ―住友化学と低燃費タイヤ用合成ゴム(S―SBR)事業の統合を決めました。
 「S―SBRによってタイヤの摩耗性やウェットグリップ性、燃費性を向上するには、ポリマーとシリカの相性を良くする末端変性技術がカギを握る。両社が育んできた独自技術を融合すれば差別化を加速でき、国内外の競合ともさらに渡り合える体制が整う。シンガポールに両社が持つ生産拠点なども有効活用し、存在感を高めていくつもりだ」
日刊工業新聞2017年2月15日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
JSRは、S―SBRで17年度にもタイ子会社の2期工事を完了。18年度に稼働するハンガリーの新工場と合わせ、全社の年産能力を従来比2倍の22万トンにする。ライフサイエンス領域の買収効果や、ABS樹脂事業の統合効果も引き出す。次の60年に向け「ワイズスペンディング(賢い支出)の視点で取り組んでいく」構えだ。 一方の日本ゼオン。S―SBRは15年度の世界需要が約110万トンで、この先も年率6―8%の成長が期待できる。住化との統合会社「ZSエラストマー(ZSE)」にはゼオンが60%出資し、主導権を握る。ZSEの生産能力は単純合算で17万3000トンとなり、生産増強中の旭化成やJSRに迫る規模を手に入れる。 (日刊工業新聞第ニ産業部・堀田創平)

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