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バラ積み貨物の「常石」、クルーズ客船参入の勝算

瀬戸内海の観光は強敵揃いも、富裕層の需要獲狙う
バラ積み貨物の「常石」、クルーズ客船参入の勝算

クルーズ事業の成否はグループ全体の成長戦略も占う(「ガンツウ」の完成イメージ)

常石グループがクルーズ客船事業に乗り出す。グループ中核企業でバルクキャリア(バラ積み貨物船)が主力の常石造船(広島県福山市)が初めての客船を建造、クルーズ事業もグループ会社が担当する。瀬戸内海を船上で宿泊しながら遊覧できる客船で、富裕層の需要獲得を狙う。だが、瀬戸内海に照準を合わせた観光は、強敵も存在する。事業の成否はグループ全体の成長戦略も占う試金石になる。

 常石グループのせとうちホールディングス(HD)でクルーズ客船事業を担う、せとうちクルーズ(広島県尾道市)が2017年9月にクルーズ客船「ガンツウ」を就航させる。

 テラスを備えた全19室で、海を見渡すオーシャンビューを楽しめる。50平方メートルの部屋で1泊30万円(消費税抜き)から、95平方メートルの部屋で同80万円(同)からという価格。富裕層を対象に、1泊2日から3泊4日まで瀬戸内の四季の魅力に応じた航路を用意する。

 瀬戸内海を生かした豪華観光事業には、“先発組”がいる。JR西日本だ。同社はクルーズ型の寝台特急「トワイライトエクスプレス瑞風」を6月に運行を始める予定。瀬戸内海沿いの名所に立ち寄る観光もコンセプトに掲げる周遊コースだ。

遊覧飛行と連携


 ガンツウの旅行販売を扱う、せとうちクリエイティブ&トラベル(東京都千代田区)の白井良邦社長は「(瑞風と照準が)富裕層で重なるが、(瀬戸内海で宿泊できるクルーズ船は)前例がない」と勝負に出た経緯を話す。「もちろんインバウンド(訪日外国人旅行者)も狙いたい」と生き残りを目指す。

 一方、高価格帯を踏まえ「いかにお客さまに来てもらえるかだが、厳しい見通しは事実」と、せとうちクルーズの城暁男社長は率直な懸念を口にする。

 このため傘下の、せとうちSEAPLANES(広島県尾道市)で16年8月から実施している、水陸両用機を用いた遊覧飛行事業との連携も模索する。城社長は「同じグループ。コラボレーションしたい」と、広島空港からガンツウの出発港まで利用客を運ぶことも視野に入れる。

 ガンツウは全長81・2メートル、総トン数3200トンの客船。「設計部門が苦労して作り上げている」(城社長)という常石造船のノウハウの結晶だ。

 客船事業が軌道に乗れば、外部から小型クルーズ客船を受注できる可能性も秘める。ガンツウの成功を見据え、可能な限りの手段を講じるため、常石グループの総合力が問われそうだ。
(文=福山支局・林武志)
日刊工業新聞2017年2月9日
長塚崇寛
長塚崇寛 Nagatsuka Takahiro 編集局ニュースセンター デスク
大型客船の受注を凍結した三菱重工業も中小型客船に特化する方針を示している。記事の通りインバウンドなどをターゲットとした観光需要が見込めるのだろう。

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