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化学大手、業績上振れ相次ぐも忍び寄るトランプリスク

円安、原油安で石化市場がけん引。主要顧客の自動車産業に不透明感
 総合化学6社のうち4社が2017年3月期連結決算業績予想の営業利益を上方修正した。国内外で堅調な石油化学品需要をベースに、為替の円安進行や原燃料安などの追い風が重なる。ただ、足元は“絶好調”ながら、トランプ米大統領による急激な通商政策の転換は、自動車など主要顧客への影響が懸念される。素材産業にとっても来期以降の最大のリスク要因となる。
 
 三菱ケミカルホールディングスは8日、「エレクトロニクス・アプリケーションズ」を除く全部門で通期業績予想のコア営業利益(非経常的な損益を除いた営業利益)を上方修正した。小酒井健吉専務は「石化市況は非常に好調だ。アジア、特に中国で需要が堅調だ」と語った。

 アクリル樹脂原料のメタクリル酸メチル(MMA)事業がけん引役だ。通期のコア営業利益予想を16年10月公表比105億円増の375億円に見直した。原料安で利幅が拡大するほか、アジアで液晶パネル用導光板向けなどの需要も旺盛だ。好業績を受けて、期末配当を同2円増の10円に引き上げる。

 旭化成も原料安と市況改善で繊維・樹脂原料のアクリロニトリルの利幅が拡大し、三井化学は国内のエチレンプラントなどの高稼働が大きく貢献する。東ソーは塩化ビニル樹脂などで市況が想定以上に改善する。

 一方、住友化学は業績予想を据え置いた。16年4―12月期時点で液晶パネル用偏光板や鶏飼料添加物とともに石化も採算が悪化して、他社のように利益貢献できなかった。サウジアラビアの合弁会社のペトロ・ラービグで続く設備トラブルも経常・当期利益を押し下げている。

 宇部興産は営業利益予想などを下方修正した。セメント・生コンの国内販売が低調で、化学部門も一部製品の原料高騰などで厳しい状況だ。
                  



日刊工業新聞2017年2月9日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
足元では主原料のナフサ価格が上昇、石化事業の一段の利益押し上げは期待しづらい。以前からの課題である「脱石化」を進めたいところだが、トランプ政策がどう影響してくるか。

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