核心に迫れるか、原発ロボット!「福島第一」ようやく炉心の状況が明らかに
今日にも、まず堆積物掃除ロボを格納容器に投入
原発事故の核心にロボットが迫ろうとしている。3月末までに東京電力福島第一原子力発電所の1号機と2号機に調査ロボットが投入される。いずれも溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の調査が目的だ。燃料デブリの状態を知ることはデブリの取り出し工法を決める上で重要なステップになる。事故からまもなく6年。燃料デブリの様相が明らかになろうとしている。
「ようやく核心に迫れる段階に来た」と東電福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは説明する。建物内の除染や従業員の作業環境整備を進め、ようやく炉心の状況を調べる段階までたどり着いた。
1号機は核燃料のほぼ全量が溶け落ちて格納容器の底に広がっており、2号機は一部が溶け落ちたものの核燃料の大部分は圧力容器内に留まっていると推計されている。ただ実態は見てみないとわからない。ロボットやカメラを投入し、まずは視認を目指して計画が進められてきた。
1月末に2号機の格納容器内にカメラが挿入され、燃料デブリが落ちてできたとみられる穴を見つけた。圧力容器を支える円筒の構造物(ペデスタル)の内部に初めてカメラが入り、圧力容器の底やその下の作業空間を撮影した。
圧力容器底部の制御棒駆動機構や計装機器は比較的以前の状態で残っていたものの、その下の作業空間では格子状の床(グレーチング)がゆがみ1メートル四方の穴があいていた。
グレーチングは鉄製で鉄の融点は約1500度C。東電は結論付けられていないが、溶けた核燃料が2000―3000度Cの高温になり、グレーチングを溶かしながら落下したとみられる。
2号機はサソリ型ロボを投入し、内部を調査する予定。ただペデスタル内に進入してすぐの場所に穴が空いており、サソリ型ロボが想定していた調査ルートが通れなくなっていた。
またグレーチング上や投入するレール上には褐色や黒色の堆積物があった。サソリ型ロボが堆積物上を滑らずに走れるか、事前確認する必要が出てきた。現在、調査法を見直している。
ペデスタル進入口の近くに堆積物や穴があったことは利点もある。ペデスタル内をサソリ型ロボが走り回る調査は難しくなったが、堆積物のサンプリングや穴の底にある落下物の確認がしやすい場所にあるといえる。
カメラは長さ10・5メートル、重量150キログラムのさおの先端に搭載してペデスタル内まで挿入された。さおを強化し先端にマニピュレーターやセンサーを付ければ、自重制限の厳しいロボには難しい力仕事ができる。ロボットよりも回収しやすい。
サソリ型ロボは自身の真下を観察できるため、穴の縁に接近して底の燃料デブリを捉えられる可能性がある。サソリ型ロボは有線で電力や制御信号をやりとりしているため、穴の中に降ろしてしまうことも可能だ。
燃料デブリへの冷却水のかかり方や格納容器底のコンクリートとの反応具合など、ロボット自体が回収できなくなっても余りある情報が得られるだろう。東電原子力・立地本部の岡村祐一本部長代理は「ロボットが壊れるまで使い倒したい」という。
サソリ型ロボの前に走行ルートの堆積物を除去する掃除ロボを投入する。7・5メガパスカル(メガは100万)の高圧水を噴射したり、機体前面のスクレーバーで堆積物をそぎ落としたりして堆積物の性状を確認する。体積物上の走行性を確認し、サソリ型ロボの調査に反映する。
掃除ロボは放射線量分布を測定し直す役割もある。さお付きカメラを挿入した際に毎時530シーベルトという高線量が観測されたためだ。この場所がペデスタルの外で内部よりも高かったため、値が本当ならペデスタル外部まで燃料デブリが広がっていることになる。
ただ宇宙線ミュー粒子(ミューオン)測定では、大部分が圧力容器内に留まっていると推計されており、結果が矛盾する。掃除ロボが線量分布を計り直すことで決着を付ける。
1号機では15年4月にヘビ型調査ロボが投入された。17年はヘビ型調査ロボの後継機となるワカサギ釣り型ロボ「PMORPH」(ピーモルフ)が投入される。
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(文=小寺貴之)
「ようやく核心に迫れる段階に来た」と東電福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは説明する。建物内の除染や従業員の作業環境整備を進め、ようやく炉心の状況を調べる段階までたどり着いた。
1号機は核燃料のほぼ全量が溶け落ちて格納容器の底に広がっており、2号機は一部が溶け落ちたものの核燃料の大部分は圧力容器内に留まっていると推計されている。ただ実態は見てみないとわからない。ロボットやカメラを投入し、まずは視認を目指して計画が進められてきた。
ペデスタル撮影
1月末に2号機の格納容器内にカメラが挿入され、燃料デブリが落ちてできたとみられる穴を見つけた。圧力容器を支える円筒の構造物(ペデスタル)の内部に初めてカメラが入り、圧力容器の底やその下の作業空間を撮影した。
圧力容器底部の制御棒駆動機構や計装機器は比較的以前の状態で残っていたものの、その下の作業空間では格子状の床(グレーチング)がゆがみ1メートル四方の穴があいていた。
グレーチングは鉄製で鉄の融点は約1500度C。東電は結論付けられていないが、溶けた核燃料が2000―3000度Cの高温になり、グレーチングを溶かしながら落下したとみられる。
調査法見直し
2号機はサソリ型ロボを投入し、内部を調査する予定。ただペデスタル内に進入してすぐの場所に穴が空いており、サソリ型ロボが想定していた調査ルートが通れなくなっていた。
またグレーチング上や投入するレール上には褐色や黒色の堆積物があった。サソリ型ロボが堆積物上を滑らずに走れるか、事前確認する必要が出てきた。現在、調査法を見直している。
ペデスタル進入口の近くに堆積物や穴があったことは利点もある。ペデスタル内をサソリ型ロボが走り回る調査は難しくなったが、堆積物のサンプリングや穴の底にある落下物の確認がしやすい場所にあるといえる。
カメラは長さ10・5メートル、重量150キログラムのさおの先端に搭載してペデスタル内まで挿入された。さおを強化し先端にマニピュレーターやセンサーを付ければ、自重制限の厳しいロボには難しい力仕事ができる。ロボットよりも回収しやすい。
サソリ型ロボは自身の真下を観察できるため、穴の縁に接近して底の燃料デブリを捉えられる可能性がある。サソリ型ロボは有線で電力や制御信号をやりとりしているため、穴の中に降ろしてしまうことも可能だ。
燃料デブリへの冷却水のかかり方や格納容器底のコンクリートとの反応具合など、ロボット自体が回収できなくなっても余りある情報が得られるだろう。東電原子力・立地本部の岡村祐一本部長代理は「ロボットが壊れるまで使い倒したい」という。
サソリ型ロボの前に走行ルートの堆積物を除去する掃除ロボを投入する。7・5メガパスカル(メガは100万)の高圧水を噴射したり、機体前面のスクレーバーで堆積物をそぎ落としたりして堆積物の性状を確認する。体積物上の走行性を確認し、サソリ型ロボの調査に反映する。
掃除ロボは放射線量分布を測定し直す役割もある。さお付きカメラを挿入した際に毎時530シーベルトという高線量が観測されたためだ。この場所がペデスタルの外で内部よりも高かったため、値が本当ならペデスタル外部まで燃料デブリが広がっていることになる。
ただ宇宙線ミュー粒子(ミューオン)測定では、大部分が圧力容器内に留まっていると推計されており、結果が矛盾する。掃除ロボが線量分布を計り直すことで決着を付ける。
1号機では15年4月にヘビ型調査ロボが投入された。17年はヘビ型調査ロボの後継機となるワカサギ釣り型ロボ「PMORPH」(ピーモルフ)が投入される。
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(文=小寺貴之)
日刊工業新聞2017年2月9日