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シャープが出資に関心も見送る。どうなる「東芝・半導体」の入札

鴻海は正式に名乗り
シャープが出資に関心も見送る。どうなる「東芝・半導体」の入札

左からシャープの戴社長、鴻海の郭会長、シャープの高橋前社長(昨年4月)

 東芝が3月末をめどに分社する、半導体メモリー事業の新会社への入札が本格化している。協業する米ウエスタンデジタル(WD)のほか、同マイクロン・テクノロジー、韓国SKハイニックスといったメモリーメーカーが名乗りを上げる中、異色と言えるのが台湾・鴻海精密工業。東芝との連携強化で、半導体市場への足がかりを得たい考えだ。東芝の技術力の高さやその魅力が改めて浮き彫りになった形だが「債務超過回避」という最大の課題を前に、残された時間は少ない。各社の思惑はどう結実するか。

 7日、鴻海幹部が東芝のメモリー事業新会社への出資者を選ぶ入札に応じたことを明らかにした。傘下のシャープも関心を示していたが、資金面から出資は難しいと判断し、入札への参加は見送った。

 鴻海は米アップルのスマートフォン「iPhone」の組み立てを請け負っている。シャープ買収はアップル向けの部品供給の拡大が狙いの一つだった。アップルにメモリーを供給する東芝の半導体事業に出資することで、サプライヤーの地位をさらに高める狙いがあるとみられる。

 東芝がメモリー新会社へ外部資本を導入する目的は、本体の資本増強だ。それに対し出資に意欲をみせる各社の狙いは、東芝のメモリー事業との関係強化を図り、市場での地位を高めること。ただ20%未満の出資比率では経営に大きく関与できず、将来は出資比率の引き上げも焦点になってくる。また同業他社であれば、独占禁止法の審査も足かせとなる。

 米調査会社ガートナーのリサーチ・バイスプレジデント、ジョー・アンスワース氏は「ビジネスや知的財産、必要に応じた追加投資で相乗効果を生み出し、また日本と(WDがある)米国の企業文化に適合するパートナーが理想だ」と見る。

 3月末までという差し迫った期限を抱え双方の思惑が渦巻く中、どこに落としどころを見つけるのか。その結論は再建に向けた重要な一歩となる。
日刊工業新聞2017年2月8日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
捨てる神あれば拾う神あり。昨年の春まではまさに債務超過寸前だったシャープが今度は東芝の半導体に出資に関心を示すまでになるとは。この15ー20年、日本の電機業界のマネジメントは何だったのかとちょっと悲しくもなる。 東芝・半導体の出資が複数社になった場合、条件や契約内容が難しくなりそうだが。

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