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日産、成長の柱「米・中市場」で油断できない事情

サブプライムに台頭する中国地場ブランド
日産、成長の柱「米・中市場」で油断できない事情

米国でなかったサイズのSUV「ローグスポーツ」を今春投入

 2016年の米国市場はわずかながらの伸びを示し過去最高を更新した。今年はピークアウトするとみられているが「堅調さは持続する」と日産自動車チーフパフォーマンスオフィサー(CPO)のホセ・ムニョス。だが、インセンティブ(販売奨励金)やサブプライムローンに依存した販売で「市場の中身を見ると強制的に支えられている部分もある」(ムニョス)という。

 日産は16年に米国で156万台を売りシェアを拡大中だ。日本車2位のホンダとの距離を縮めて勢いづくが、日産のインセンティブも多くサブプライムローン客の比率も高いとの指摘もある。

 一方でガソリン安による大型車人気で「小型トラック」と乗用車の比率が逆転する市場構造の転換も起きている。

 「シェアをにらみながら乗用車を生産調整しインセンティブを抑制している。(金利上昇に備え)ローン条件の最適化も進めている」(同)という。

 日産を含め日本車は乗用車の比率が高く小型トラックの供給増を急ぐ。米国事業の運営はこれまで以上にシェアと利益の高度なバランス感覚が求められている。

 「世界シェア8%のポテンシャルは十分ある。そこに向けて克服しないといけないのが中国だ。でないと世界シェア8%は厳しいだろう」。共同最高経営責任者の西川廣人はこのような見方を示す。

 日産は16年に135万台を販売し過去最高を記録したが、中国自動車工業協会(CAAM)の市場全体の出荷台数を基にするとシェアは5%にとどまる。

 SUVに強い長城汽車など中国系ブランドが実力をつけてシェアを拡大している。こうした中国系ブランドの対抗馬になるのが、日産の現地合弁会社が手がける現地ブランド「ヴェヌーシア」だが、勢いが劣る。

 人気のSUVの新車種を投入するなど商品群を拡充し「中国系ブランドを追いかけている」(西川)。中国のシェア拡大には「日産ブランドだけでなくヴェヌーシアの発展が必要だ」(ムニョス)。

 二大市場米中でのシェアと利益の拡大は日産の成長戦略の根幹をなすだけに、市場の変化を見据えた慎重なかじ取りが求められる。特に米国はトランプ新政権の動向次第で逆風となる可能性もあり油断できない情勢だ。(敬称略)
日刊工業新聞2017年2月3日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
5年ほど前に、米国では複数車同時立ち上げによる調達混乱があり、中国では反日デモがあったが、持ち直している。

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