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減らせ突然死、ドラッグストアに「AED」を

減らせ突然死、ドラッグストアに「AED」を

ドラッグストアは健康・安全の意識も高く、AED設置が進みつつある

 日本ヘルスケア協会(松本南海雄理事長=マツモトキヨシホールディングス会長)は、ドラッグストアは健康・安全の意識も高く、AED設置が進みつつあるなどヘルスケア産業向けに救命活動ができる救護者の育成を始める。2月から自動体外式除細動器(AED)や救急救命に関する講習を開始し、9月にも20人程度を認定する。一般市民に身近な流通の現場などでAED設置や人材育成を図り、突然死の低減につなげる。

 日本ヘルスケア協会の「減らせ突然死 救命・AED機器推進部会」(大川力也部会長=オムロンヘルスケア国内営業本部長)が、職種や職位に応じた救護者育成プログラムを作成する。企業の教育担当者や店舗責任者などを対象にした「指導者講習」、店長向けの「一般講習」などで構成する。

 ドラッグストアや薬局、フィットネスクラブ、健康食品を扱う食品スーパーなどを対象とし、ヘルスケア産業全体に救急救命とAEDを普及させる。各企業で教育を実施し、救護者育成の核となる人材を「指導者」として認定する方針だ。

 同部会は2016年12月に「減らせ突然死 ヘルスケア産業界におけるAED機器設置と心肺停止予防ガイドライン(指針)」を策定しており、救護者の育成もその一環として取り組む。

 AEDは04年に一般市民の使用が許可されて以来、普及が進む。駅や学校、スポーツ施設など、国内50万―60万台が設置され、人口当たりの普及率は世界でも屈指だ。

 一方、年間約7万6000人が病院外で心肺停止になり、うち約9割が死亡している。突然死の約7割が自宅で発生しており、「自宅で倒れる人を助けるに足りる設置状況になっていない」(オムロンヘルスケア国内営業本部AED営業部の中村勝行マイスター)。

 生活者に身近で、高密度な設置を実現するにはドラッグストアなどは“好立地”だ。実際、「ドラッグストアは健康・安全の意識も高く、AEDの設置が進みつつある」(オムロンヘルスケア国内営業本部AED営業部の友田紳也課長)。

 また、ヘルスケア産業への普及は食事や運動など生活習慣病の改善を促し、突然死の原因の予防にも関与できる可能性もある。

 突然死を減らすためにはAEDなど機器の設置と救護者の育成が“両輪”だ。一般市民に身近なヘルスケア産業で救命活動の重要性を啓発することにより、積極的に人を助けるという意識の向上も期待できる。社会全体で突然死のリスクを封じ込める一助になる。
日刊工業新聞2017年1月26日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
街中でAEDをよく見かけるようになった。ただ、いざ目の前で心停止になった人が発生した場合、救護活動をするのは他の誰かではなく、自分だ。助けようという意思が欠かせない。普段からの気持ちの備えが重要だろう。

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