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春闘にもトランプの影。「就労のカタチ」どう描く

労使トップ、焦点を語る
 2017年春闘がスタートする。デフレからの脱却を目指す政府が賃上げ実施を求める中、労働側が4年連続でベースアップ(ベア)実施を要求。これに対し、経営側からは米トランプ政権の通商政策見直しなどを理由に慎重論が出ている。3月15日の大手集中回答日に向け、ベア実施がどこまで広がるかが焦点になる。

 「少なくとも前年並みの水準の賃上げを期待したい」。アベノミクスを再点火させたい安倍晋三首相は4年目となる官邸主導の「官製春闘」で個人消費の向上を促し、経済の好循環を実現させたい考えで、昨年開かれた「働き方改革実現会議」で企業側に賃上げを迫った。

 連合の今春闘でのベア要求水準は「2%程度」。定期昇給(定昇)相当分を含めて4%水準の賃上げ要求となる。

 連合の方針を受け、自動車や電機、鉄鋼・造船など主要製造業の産業別労働組合で組織する金属労協(JCM、相原康伸議長=自動車総連会長)の賃上げ要求は16年春闘要求と同水準の「月額3000円以上」。春闘相場をリードするトヨタ自動車労組などが同額のベアを近く経営側に要求する予定だ。

 しかし、米国の環太平洋連携協定(TPP)離脱表明や英国の欧州連合(EU)離脱の二つの離脱の影響を懸念する経営側のガードは堅い。3年連続でベアを実施してきたホンダだが、「グローバル競争の激化に備えなければならない」(尾高和浩取締役)と慎重な姿勢だ。 

 また、電機連合の中核労組の東芝労組が経営の悪化を理由に2年連続で電機連合の統一交渉からの離脱する見通し。

中小企業の賃上げは?


 焦点は従業員の7割弱を占める中小企業の賃上げ原資の確保と非正規の賃上げができるかだ。

 連合の神津里季生会長は「デフレ脱却のためには中小企業の月例賃金と非正規の時給引き上げが不可欠」とし、今年も「底上げ・底支え」「格差是正」を春闘のスローガンに掲げ、中小組合(組合員300人未満)の賃上げ要求目安は6000円。定昇に当たる賃金カーブ維持相当分4500円を含め、総額1万500円の強気の要求目安を示した。

 24日の「経団連労使フォーラム」でトヨタ労組出身の相原議長は「3500円、4000円(の要求)もあるかもしれない」とし、トヨタ以上の賃上げを求めるグループ内の中堅・中小労組があることをにおわせた。

非正規の待遇改善は?


 日銀による大規模な金融緩和や財政出動を進めてきたのにもかかわらず、安倍首相は公約のデフレ脱却をいまだに果たせていない。「トリクルダウン」が起きず、国民の間で格差は広がった。

 トリクルダウンとは「富裕層や大企業がもうかれば、やがてその富が国民全体にしたたり落ち、結果として経済が成長する」という理論だが、一向に消費が回復しない。

 連合の集計では昨年春闘での全体賃上げ率は2・00%に対し、中小労組の賃上げ幅は1・81%だった。バブル崩壊以降、格差は縮まっていない。

 そもそも中小企業では労組結成が困難で、ベアどころか定昇という概念さえないのが実情だ。連合加盟組合ですら「賃金制度がある」と回答したのは67・1%。そもそも、100人未満の中小企業の組織率は1%程度に過ぎず、100人に1人しか労組に加入していないのが実情だ。

 パートタイマーの労組加盟率は年々上がっているものの、16年の推定組織率は7%。派遣や有期雇用労働者を含めた非正規の待遇改善は、労使交渉だけでは解決できない問題となっている。

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日刊工業新聞2017年1月31日
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
今年の春闘は賃上げだけでなく、長時間労働の是正や非正規社員の処遇改善も重要課題。こうした働き方改革を急ぐべきとの認識では労使は一致しています。

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