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「超絶 凄ワザ!」最強の洗濯ばさみ。対決した企業はこんな会社

マルト長谷川工作所vsイマオコーポレーション
 どんな強風でもつかんだ物を放さない“最強の洗濯ばさみ”を作れ!巨大送風機が生み出す風速70mに耐えられるか?まず挑むのはペンチ職人。部長と若手の対立を乗り越え、開発した鋼鉄製洗濯ばさみの実力は?対するはアイデア勝負の固定具メーカー。使い心地を重視し、開発チームには必ず女性が入る。だが、無理難題に開発は難航。女性目線で見つけた突破口とは?洗濯ばさみ1つが運命を分ける大接戦…最強の称号はどちらの手に?
                 

                 

             

                 


「生き方の部分も見習ってもらいたい」


 マルト長谷川工作所(新潟県三条市、長谷川直哉社長)は、主力の工具を高付加価値型にシフトしている。それと同時にネイルニッパーなど高級理美容品に参入し、グローバル展開を積極的に進める。狙いは収益力の強化だ。これを高付加価値商品の多品種少量生産で目指す長谷川社長に事業展開について聞いた。
最重要工程とともに技術伝承を担当する今井顧問

 ―商品構成が大きく変わっています。
 「2015年12月期の売上高は約14億円で、ピーク時の約18億円よりも減っているが、売上高の内容が異なる。ピーク時は商品を大量生産し、薄利多売するケースが多かった。メーカーには商品の安定供給責任があるため、一気にはできなかったが、徐々に大量生産商品を減らし、高付加価値型にシフトしていった」

 ―背景にはどのような理由がありますか。
 「ハイパー円高と新興国の台頭、人口減少などに伴う国内市場の縮小がある。国内で大量生産し、海外で販売するビジネスモデルが成立しなくなった。その中で利益率の高い高付加価値商品にシフトし、確実に利益を確保するのは必然の流れだ」

 ―設備投資を積極的に行っています。
 「15年12月期は約2億円で少し多めだった。当社の設備投資は生産能力の増強ではなく、職人の負担を軽くするための設備投資だ。機械も年々進化しており、人でしかできなかったこともできるようになっている。今後も継続的に設備投資し、職人には人でしかできない、いい仕事に全力投球してもらいたい」

 ―人材教育に力を入れています。
「バブル経済崩壊後の平成不況や08年秋のリーマン・ショックなど経営が苦しい時にあえて資金とエネルギーを人材に投入した。もちろん人員整理は行わず、毎日、出社してもらい、社員教育を行った。その中から企業理念が生まれた」
 
 ―優秀な職人の育成が課題です。
 「ネイルニッパーについては今も現役で仕上げ刃付け(刃物の切れ味の調整と切れ味をアップする工程)を手がける今井茂技術顧問が技能伝承を行っている。今井顧問の後継者も育ちつつあるが、技術をハードだとすると、ソフト、つまり生き方の部分も見習ってもらいたい」

【ポイント/企業文化が原動力】
 自主的に、始業1時間前には機械のセッティングを終えている社員。このような社員に恵まれているのがマルト長谷川工作所だ。背景には昭和30―40年代の急成長期を支えた元専務である相沢弘氏の存在があるという。相沢氏は元教師で、自分の頭で考え、行動する癖を徹底的に教え込んだという。この教えが根付いているのが強みであり、成長の原動力になっている。この企業文化を守り、時代に合わせて発展させるのが長谷川社長の使命だ。
(文=新潟支局・中沖泰雄)

日刊工業新聞2016年11月10日



「一人ひとりが主役」


顧客の声を形にした標準治具「ワンタッチクランプ」

 今尾任城(たつき)は2009年6月、48歳の時に叔父から社長を継いだ。2代目社長で会長の父、達(とおる)は標準機械部品、標準治具、アルミニウム構造材などの現在の主力事業を次々に立ち上げたカリスマ経営者だ。その父から言われた一言は「俺のまねをするな」だった。

 達が事業化した製品群は、欧米製品の輸入販売や国産化が中心だった。自ら海外に出向いて新商品を発掘した。社員は達を信じ、従えばよかった。しかし、00年ごろからこれらの製品群の売れ行きが鈍化した。

 独自開発路線を目指したが、社長に頼る社員の待ちの姿勢はすぐには変わらない。任城の社長就任直前の09年3月期は景況も冷え込んでおり、営業赤字になった。

 任城はトップダウンでは独自製品を開発できないと痛感した。代わりに社員の声を聞き、一人ひとりの能力を生かすことに徹した。12年に社員による社長評価制度を始めた。希望する社員が5項目を5点満点で評価し、自由に意見も書く。

 任城は「上から下への一方的な評価に疑問があった」と打ち明ける。14年度は社員241人中90人が評価し、平均点は4点強。「少し上がった」と苦笑しつつ「自分がやることの正否を確認したい。役職定年など気付かされる意見も多かった」と手応えを感じている。

 「社長をあまり知らないので評価できない」との“評価”もあった。このため13年10月から10カ月間、社員全員と面談した。業務上の意見交換はもちろん、通常であれば社長の耳には入らない職場の人間関係や私生活まで話題にした。

 任城は「社員のことを知らなかった」と振り返る。今後は担当役員と部下の面談を定例化する計画だ。また8月に社員の家族による職場参観も開いた。やる気の向上に加え、職場を超えた社員交流も期待している。

 それでも社員の意識改革は道半ばだ。営業主導の独自製品開発の成果はまだ乏しい。専務の吉田浩明は「有効なアイデアは優秀な人でも年に二つ。ゼロの人も多い」と明かす。

 技術一部長の小原敦司は「製品開発は営業主導のマーケットインに加え、本当は技術者側からノウハウの蓄積を形にするプロダクトアウトももっと出なければいけない」との問題意識も強めている。

 社員の自主性やチャレンジ精神を引き出すため、4月に人事制度の改革プロジェクトを立ち上げた。任城は「できれば人事評価と給与を切り離したい。成果主義ではなく、アイデアが形になるうれしさ、顧客が喜ぶやりがいが、社員の動機になる会社にしたい」と言う。上司、部下や同僚が参加するオープンな評価制度も導入する方針だ。任城は新たな成長の糧が社員一人ひとりの中にあると信じている。
(敬称略)
(文=岐阜支局・村国哲也)
※内容、肩書きは当時のもの

日刊工業新聞2014年9月19日




明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
今回はイマオコーポレーションの勝利しました。両社とも日刊工業新聞でよく取り上げらているとても優れた技術を持つ会社です。

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