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「ポケモンGO」の先へ。AR搭載ヘルメット、カタールの砂漠で試験運用中

「“現場と本社、双方のスマート化”を支援してくれる」(GEオイル&ガス)
 ポケモンGOの大ヒットは、2016年の一大トレンドでした。ブームの決め手になったのは、現実世界の中にポケモンのキャラクターを融合して表示する「拡張現実(AR)」というテクノロジー。ARはゲームにとどまらず、今後はるかに大きな役割を担うべく、世界中で利用され始めています。実際、GEでは石油やガスの採掘にこのテクノロジーを活用しています。

 たとえば、世界最大級の液化天然ガス(LNG)プラントがあるカタール北部。暑い砂漠の中、通常の保守作業を行うために現地に到着したフィールド・エンジニアの姿を想像してみてください。

 頭には鮮やかな青いヘルメット。じつはこのヘルメット、作業現場で頭を守るだけでなく、外部とリンクする機能を備えています。

 彼が被っているのは「スマートヘルメット」・これを使えば、音声コマンドで簡単に地球の反対側の本社の同僚と連絡を取ったり、文書や作業手順、動画、図面をヘルメットのバイザーに表示させてもらうよう協力を求めることも可能です。

 昔であれば、こうした保守作業の前に何度も事前出張して現場調査を行い、次の作業計画のために必要な写真、動画、エビデンスを集めるのが当たり前でした。

 しかし「スマートヘルメットがあれば行ったり来たりしなくてすむようになります」と話すのは、GEオイル&ガスのターボマシナリー・ソリューション部門の現場プロダクトリーダー、ジュリア・プレイヤー・ガレッティ氏。

 彼女のチームでは現在15個のヘルメットを試験運用中で、ゆくゆくはこのデバイスが予期せずして起こる問題がもたらすダウンタイムを半減させ、顧客企業に何百万ドル(何億円)もの節約をもたらすことができると期待しています。「このヘルメットが、私たちが目指す“現場と本社、双方のスマート化”を支援してくれるんです」

 このスマートヘルメットを開発したのは、イタリアのピサ大学から生まれたAR分野のパイオニア、VRMedia社。ヘルメットの設計者は、業界認証取得した安全帽に、ビデオカメラ、眼の付近に位置するディスプレイ、ネットワーク接続を確保する帯域幅と双方向通信を可能にするBluetoothヘッドセットを搭載しました。音声コマンドは、オフィスのチームとの情報交換をしながらも、手元で作業を進めることが可能です。
(すべての写真:GEオイル&ガス)


 「このヘルメットは、シンプルな操作性と無駄のない機能を備えており、それでいてきちんと役に立つ、産業向けに開発したものです」とVRMedia社のCTO、フランコ・テッチーア氏は言います。

 VRMedia社は現在、GEオイル&ガスと協働してスマートヘルメットの開発を急ピッチで進めています。テッチーア氏は「GEの現場技術者は日々、幅広く、複雑なシナリオに直面していますからね。スマートヘルメットを最適化していくにはうってつけの環境なんですよ」と話しています。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
疑似体験をいかに現実のビジネスに落とし込むか。そういう意味でARは工場やプラントの作業現場と相性がいい。

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