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中・四国経済にみる「地方が幸せになる」広域連携 

経済界トップが語る2017年。「地方創生のチャンスはどこにある?#03」
**中国経済連合会 苅田知英会長
 「行動する中国経済連合会」を掲げるのは苅田知英会長。2016年6月に就任し、17年度は初めての自前事業計画となる。会員の“知恵”と“実践”の時をどう組み合わせるのか。目指す中国経済連合会のあり方を聞いた。

 ―足元の地域景況をどう見ていますか。
 「景況感は持ち直し、先行きも緩やかな改善の見通し。この地方は輸出比率が高いだけに円安が製造業を後押ししている。設備投資も多くの企業で前年度実績を上回りそうだ。16年3月期決算は依然、減収減益見込みの流れだが、急速に持ち直しつつある。仕入れ、販売価格の低下で売上高は伸び悩んでいるものの、利益増の企業は多い。ただ米国の新大統領就任、欧州の不透明感などリスク要因は山積している。人手不足感も全産業で深刻だ」

 ―新年度も16年の創設50周年行動計画を踏襲しますか。
 「地域産業の振興、インフラ整備、地方創生の3点が柱になる。産業競争力ではスーパーコンピューターを使ったバーチャル部品設計などで新付加価値産業を創成。IoT(モノのインターネット)技術などを駆使した広島トライアルを中国地方へ拡大させる。人材育成は専門部会を立ち上げた。企業の認知度アップのための多様なインターンシップ(就業体験)にも取り組む。起業家創出では、キャンパスベンチャーグランプリなどの重要度が増す。働き方改革や女性の登用などにも取り組みたい。インバウンド(訪日外国人)誘致では、バラバラに展開していたWi―Fi(ワイファイ)統一が急務と思っている。鳥取の境港整備なども重要だ」

 ―就任以来、“中国経連の役割”を強調されています。
 「やるべき課題は多い。自治体、企業、大学、経済団体など一つの枠には収まりきれないものばかりだ。逆に同じテーマをそれぞれがやっていることも多々ある。これらの屋上屋を整理整頓し、橋渡しするのが中国経連の役割と考えている。ただ言うは易しで、自治体や大学の壁は厚い。それでも横串を通し、それぞれの役割分担を進め、成功例を一つでも二つでも作りたい」

 ―提言や要望ばかりでなく、“行動”ということでしょうか。
 「夢も大切だが、具体的に何かを実践し積み上げることが大事。中国地方を網羅するのは中国経連と、中国経産局などの国の出先機関しかない。軋轢(あつれき)はあるが、まずは仲立ち役として、この地方が幸せになる広域連携のために、具体論で首長を説得する“行動”を起こしたい」
中国経済連合会 苅田知英会長

 【記者の目/地方創生プラン、行動いかに】
 景気は緩やかな回復基調にあるという。現実は首都圏一極化経済で、地方は回復感が乏しい。それでも、歴史を刻むごとく活性化は一歩一歩が肝要という。古代ローマの廃虚を前にした際、時を忘れてたたずみ、映像のように悠久の城壁や英雄のストーリーが浮かぶ。こんなロマンチストがどんな地方創生シナリオを描くのか。目が離せない。
(文=広島・正伝盛豪)

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日刊工業新聞2017年1月17、19日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
中国経連の苅田会長の発言「軋轢(あつれき)はあるが、まずは仲立ち役として、この地方が幸せになる広域連携のために、具体論で首長を説得する“行動”を起こしたい」。 「軋轢」とは、なかなか強い言葉だなと思ったが、それだけ各県が内向きということの表れか。自治体はどうしても自分の県域にこだわる。当然といえば当然だが、無意味なこだわりで他県と連携できないことは多い。企業が国境なき勝負を求められる時代に、県の境が邪魔をするというのは生産的ではない。自治体間の無用な壁に対しては企業が積極的に行動すべきだと思う。

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