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政府が目標年次のないAIロードマップを作った理由

持続的な前倒しになる?
 政府は16日、「人工知能技術戦略会議」(安西祐一郎議長=日本学術振興会理事長)第4回会合を開き、人工知能(AI)の産業利用の工程表(ロードマップ)案をまとめた。

 製造業や農業などに関わる生産性分野と、健康医療介護分野、自動運転や飛行ロボット(ドローン)などの空間移動分野の3分野について、実用化の順番を示した。総務省と文部科学省、経済産業省の3省による初のAIロードマップになる。3省が進める技術開発の進捗状況と整合し、3月中に正式決定する。

 ロードマップ案は、開発目標となる年次の明記は避けた。AIは技術開発が急速に進んでいるため、政府の目標年次が民間などの開発計画を遅れさせてしまうことを懸念した。

 そのため、技術が実用化される順番を示してロードマップとした。例えば生産性分野では、AI技術による需給最適化として、まず製造業や物流業を含めた受発注の最適化が進むとした。

 その後、消費者一人ひとりに対して購買を助言する秘書AIが実現。そして生活用品に加えて娯楽や教育を含めた分野横断的なサービスをAIが提案し、それぞれの価格は消費者の逼迫(ひっぱく)度やサービスの需給状況によって最適化されるとした。

 ロードマップ実現に向け、AI人材の育成策もまとめた。AI技術を競う「AIチャレンジコンテスト」を開催して人材を発掘。2020年までに約4万8000人の人材が不足するとされる状況を改善する。
日刊工業新聞2017年1月17日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
目標年次のないAIロードマップが策定されることになりそう。目標年次を政府が決め、それが外れる副作用は確かにある。産業化のロードマップは経産省主導でまとめているので、AIの周辺企業が政府のロードマップに従って出遅れると本末転倒。米国企業は日本のロードマップに従ってくれるとは思えない。一方で目標年次がないと直接AIを触っていない企業には、今がどの段階なのかも分からない。AI実用化が前倒しされたら、その都度、予測との乖離量を示す方が良いと思う。規制する側の省庁や産業界は前倒しの度におしりを叩かれ、法制度の修正や人材育成を前倒することになる。このやり方は振興側の経産省にしかできないと思う。中間案の基となった次世代人工知能技術社会実装ビジョンは10年間ごとのロードマップ。3年ごとなら開発計画の見直しと、おしりを叩かれるタイミングが合うので持続的な前倒しになる。(日刊工業新聞科学技術部・小寺貴之)

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