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国交省、高齢者の運転事故防止へ技術対策に乗り出す

自動ブレーキや追従走行システムなどの普及・促進を議論
 国土交通省は高齢運転者の事故について、技術的な対策の検討に乗り出す。高齢運転者による事故が頻発する中、自動ブレーキや、車に追従走行するシステムなどの普及・促進や関連技術の開発などを議論する。20日に初会合を開き、3月開催の同省の自動運転戦略本部に検討内容を報告する。

 会合では、自動運転戦略本部に設置された「自動運転環境整備」「自動運転技術開発・普及促進」「実証実験・社会実装」の3作業部会が一緒に各テーマを議論。国交省の自動車局や道路局、総合政策局など関係部局のメンバーで構成する。

 このうち、自動運転技術開発・普及促進の作業部会は、高齢運転者の事故対策が検討テーマ。今後の自動運転に向けた環境整備を想定しながら、まず既に市場投入されている自動ブレーキなどの事故防止技術の普及・促進を議論。併せて関連技術の開発も検討する。

 自動運転戦略本部は石井啓一国交相を本部長として、2016年12月に初会合を開いた。17年度に入り、18年度の概算要求前に中間とりまとめを行う予定。

日刊工業新聞2017年1月16日



自動運転で主導権狙う


 「実証実験を世界に先駆けてやっていくことが必要だ」。田中良生国土交通副大臣は9日、国土交通省の自動運転戦略本部初会合で幹部に号令をかけた。

 自動運転の安全基準の整備や導入・普及支援に向け、国交省が本気で取り組み始めた。石井啓一国交相を本部長とし、関係部局の局長以上で構成する自動運転戦略本部を設置。同本部設置に合わせて自動車局に、自動運転戦略室も開設した。

 きっかけは、9月に開かれた長野・軽井沢のG7(主要先進7カ国)交通相会合だ。同会合で自動運転の早期実現に向け、各国が課題解決の協力で一致し、政策推進に弾みがついた。企業の技術開発が活発化する中、政策面で後れをとれば、自動運転の普及・促進の足を引っ張ってしまう。

 自動運転戦略本部は実務的な内容を検討する三つの作業部会を設けた。一つが国際的な技術基準や事故時の賠償ルールなど自動運転に関する環境整備だ。

 国際基準づくりは国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で取り組まれている。11月には、サイバーセキュリティーとデータ保護に関し、基本的な考え方をまとめた指針を合意した。このほか、自動運転による車線の維持や変更における基準づくりも議論中だ。

 国交省は作業部会で各国の意向を情報共有・分析、WP29などで主導的な立場を取りながら、国内の産業界に有利なルールを策定できるように働きかける考えだ。

 二つ目の作業部会は自動運転技術の開発・普及促進を検討する。テーマは高齢者事故対策。高齢者ドライバーによる悲惨な事故が頻発しており「車両側の対策を考える」(国交省)方針だ。自動ブレーキなど、既存技術を活用して事故防止に役立てることで、自動運転の技術開発にも結び付ける。

 三つ目の作業部会では自動運転の実現に向けた社会実験を取り上げる。トラックの隊列走行の実証実験は経済産業省と共同で実施。国交省単独でも、中山間地域における「道の駅」を拠点とした自動運転サービスの実証実験を始める。

 道の駅に自動運転のステーションを整備し、中山間地域における物流の確保や住民の生活の足としての利用を実証する。「地域の公共交通のあり方と絡めて考える」(同)方針だ。

 自動運転への取り組みは政策的にも未知数の部分が大きい。社会システムとして円滑に導入できるよう、課題やニーズに迅速に対応した政策展開が重要となる。

日刊工業新聞2016年12月16日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
政府は頻発する高齢運転者による交通死亡事故について、関係閣僚会議を開催。経済産業省はIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)の普及を狙う一方で、自動運転システムの導入義務化ができるか検討する予定だ。

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