ニュースイッチ

CO2取引制度、今年度の利用が過去最高に

「パリ協定」発効、電力会社の「排出係数調整」増える
 二酸化炭素(CO2)排出削減量を取引する国の「J―クレジット制度」による2016年度のクレジットの利用量が16年末で36万トンとなり、3カ月を残して年度別の過去最高を更新した。国全体の排出量の4割を占める電力事業者がクレジットを大量調達しているためで、15年度比64%増の勢いで利用量が拡大した。温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の発効もあり、クレジット市場が活性化されている。

 J―クレジットは、中小企業の省エネルギー対策や森林保全などで削減できたCO2量を取引できる「クレジット」にする制度。CO2削減に取り組んだ中小企業はクレジットを売り、設備投資額の一部を賄える。クレジット購入者は自社の排出量の削減分に加えられる。

 16年度のクレジット利用量は9カ月間で、これまでの累計利用量140万トンの25%を占めた。利用量を押し上げたのが、電力事業者による「排出係数調整」だ。16年度は22万トンと前年度比5倍に増え、最も多いクレジットの用途となった。

 排出係数調整は、購入したクレジットによって発電時に排出したCO2量を減らしたと認められる仕組み。電力事業者は30年度までに排出量を35%減らす目標を定めており、達成のために係数調整を実施している。

 電力事業者からの引き合いに加え、パリ協定の発効もあり、クレジットを作る事業も増えている。

 環境省などは12月末、30年度までに創出されるクレジットの累計見込み量を16年初の337万トンから約80%増の604万トンへ上方修正した。クレジット購入希望者が増えることで、売る側の中小企業の省エネ投資も促進される。
              
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
温暖化対策推進法での届け出で、クレジットの利用用途が明らかになしました。電力会社が係数調整で利用するクレジットが拡大しています。京都クレジットを使えなくなり、国内のJ-クレジットの需要が生まれるのは良いことだと思います。省エネの設備投資などが促されるからです。

編集部のおすすめ