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「受動喫煙」対策で遅れる日本。タバコの吸い方は変わるか

禁煙外来でサポート。今後の注目は加熱式タバコの普及か
 日本が受動喫煙防止対策で遅れた国であることはご存知ですか。最近増加している外国人旅行者が驚くことの一つに、たばこが自由にどこでも吸える点があるようです。欧米先進国では1990年代より屋内禁煙の法律制定が進んでいます。

 現在では、新興国のタイやトルコでも原則、屋内禁煙となっています。お客だけではなく飲食店などの従業員も受動喫煙から守るためです。受動喫煙で吸う副流煙には発がん性物資のヒ素が主流煙の5倍以上など、多くの有害性物質が含まれています。

 世界保健機関(WHO)は、たばこ規制枠組み条約で2010年2月までに飲食店なども含めて屋内禁煙を求めていました。実は日本も04年にこの条約を締結していますが、屋内禁煙は実現していません。日本の受動喫煙対策は分煙が主流です。

 しかし、たばこ煙が扉の開閉で喫煙室から大量に漏れ、有効ではないと言われています。また、喫煙室の存在は禁煙する意欲を阻害します。今年も国は喫煙室設置に補助金を出していますが、これは締結している条約の趣旨に矛盾しています。

 たばこ煙は肺がん・喉頭がん・食道がんなどの悪性腫瘍や心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞など血管の病気、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など呼吸器の病気、アルツハイマー型認知症など多くの病気の原因・増悪因子となっています。

 01年のデンマークの研究では喫煙により寿命が7年以上短くなる以外に、寝たきりなどの障害を持つ期間も5年長くなっています。逆に禁煙により平均余命が回復することが報告されており、禁煙は最高の病気予防と言えます。

 禁煙までいかず喫煙本数を減らしたり、タールやニコチンの少ない「軽い」たばこに変えるという対策をとることがありますが、これは意味がないといえます。なぜなら本数を減らそうとするとたばこの端まで1本を極力長く吸おうとしますし、「軽い」たばこに変更すると、減ったニコチンを補うために強く深くたばこを吸うようになるからです。

 「軽い」たばこの方が血中の有害物質濃度が高いというデータもあるくらいなので、たばこ規制枠組み条約でも「ライト」「マイルド」などの表現は禁止されています。そのため、日本のたばこメーカーの主力商品も名称が変更されています。

 外来禁煙は、一定の条件を満たせば健康保険が適応でき、3割負担の方で3か月合計5回の外来受診で約2万円となっています。ニコチンの貼り薬やバレニクリン(チャンピックス)という内服薬を本人の状態に合わせて処方します。

 喫煙者には、禁煙外来受診などのサポートで、非喫煙者には屋内全面禁煙での受動喫煙対策で、それぞれの健康生活を推進したいものです。
(文=遠藤泰之・社会医療法人社団正志会 花と森の東京病院 内科医師) 
日刊工業新聞2016年6月3日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
自分はタバコを一切吸わない。以前は副流煙は気にならなかったが最近はダメだ。副流煙や匂いを減らせる日本でも急速に普及する加熱式タバコ。フィリップ・モリスの「アイコス」やJTの「プルーム・テック」が品薄になるほど。健康に配慮した次世代タバコの国内市場は2015年時点で約5億円とみられるが、2020年にはその10倍近くなるという見方もある。

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