結局、屋根は付けるの?付けないの?揺れる新国立競技場の建設問題
「猛暑対策で遮熱効果の高い塗装を競技場の屋根に施す」(大会推進室長)という計画は?
下村博文文部科学相は18日、東京都庁で舛添要一知事と会談し、2020年東京五輪・パラリンピックでメーン会場となる新国立競技場(新宿区)の建設費のうち、500億円を負担してほしいと要請した。舛添知事は回答を留保した。
下村文科相は建設費について「資材や人件費の高騰で(予定していた)1600億円台ではとても追い付かない」と説明。その上で「競技場の周辺整備もあるし、都民のスポーツ振興の場になる」と述べ、都に負担を求めた。これに対し、舛添知事は「税金を使う以上、都民も納得しなくてはいけない。負担するにもきちんとした根拠が必要だ。(整備)全体のコストがどうなるかの説明を受けた上で検討に入りたい」と述べた。
一方、舛添知事は「専門家からは19年春の完成が間に合わないという話もある」と懸念を表明。下村文科相は、予定していた屋根を付けず、座席を一部仮設にするなど計画を見直した上で、経費削減や予定通りの完成を目指す考えを強調した。
(日刊工業新聞2015年05月19日3面)
平田竹男オリンピック・パラリンピック東京大会推進室長インタビュー=14年8月
2020年の東京オリンピックは国を挙げた一大祭典。東京以外の地方自治体も外国人選手・観光客と触れあう機会が増え、日本全国をPRする絶好の機会となる。日本は20年までにどのような環境を整備すべきなのか。内閣官房2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室長の平田竹男氏に話を聞いた。
―20年にはオリンピックに関連した文化イベントが全国で行われる見通しです。
「大会組織委員会(森喜朗会長)が主に東京での大会運営に力を注ぐのに対し、当方は全国の自治体を巻き込み、日本全体で大会を盛り上げるのが役割だ。オリンピック開催中、ちょうど青森ねぶた祭など東北三大祭りが行われる。祭りは他の国にはない日本のパワーだ。こうした日本独自の文化を生かし、訪日外国人がリピーターになってくれるような取り組みが欠かせないだろう」
―多くの外国人観光客を受け入れるにはどのような環境整備が必要ですか。
「課題の一つである標識の英語表示などは、官民の有識者で構成する『多言語対応協議会』で議論を交わしている。例えば国道、都道、県道、区道がある中、どのように統一すべきかといった話がある。これ以外にもアジア人観光客に人気のラーメンや牛丼などといった『B級グルメ』、コンビニエンスストアをはじめとした流通まで、いかに外国語対応していくかが問われてくる」
「やるべきことは多いが、14年に訪日外国人は1300万人になることが予想される。この1年だけで300万人も増える。自治体は外国人受け入れにリアリティーを持ち始めており、受け入れ整備が必要だという意識は醸成されつつある」
―その他の課題は。
「ことしは猛暑だが、20年の東京オリンピックも相当暑くなることが予想される。選手が快適に競技に専念できるよう、暑さ対策を考えなければならない。例えば遮熱効果の高い塗装を競技場の屋根に施したり、霧を吹き付ける装置を設置したりする必要がある。良い技術が開発されれば世界にアピールできる上、将来、中東に輸出することも可能だ。民間のイノベーションに期待したい」
【竹田氏プロフィール】1982年横浜国大経営卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。資源エネルギー庁石油天然ガス課長、日本サッカー協会専務理事を経て2006年4月より早大大学院スポーツ科学研究科教授。13年10月より現職を兼務。大阪府出身、54歳。
【記者の目/外国人受け入れ対応の強化を】
為替の円安効果などにより、外国人観光客は急増している。20年に開催予定の東京オリンピックの“前哨戦”は始まったも同じ。「まだ6年」ではなく、「あと6年」しかないといった気持ちで、外国人受け入れ対応を強化していく必要がある。
(聞き手=大城麻木乃)
下村文科相は建設費について「資材や人件費の高騰で(予定していた)1600億円台ではとても追い付かない」と説明。その上で「競技場の周辺整備もあるし、都民のスポーツ振興の場になる」と述べ、都に負担を求めた。これに対し、舛添知事は「税金を使う以上、都民も納得しなくてはいけない。負担するにもきちんとした根拠が必要だ。(整備)全体のコストがどうなるかの説明を受けた上で検討に入りたい」と述べた。
一方、舛添知事は「専門家からは19年春の完成が間に合わないという話もある」と懸念を表明。下村文科相は、予定していた屋根を付けず、座席を一部仮設にするなど計画を見直した上で、経費削減や予定通りの完成を目指す考えを強調した。
(日刊工業新聞2015年05月19日3面)
平田竹男オリンピック・パラリンピック東京大会推進室長インタビュー=14年8月
2020年の東京オリンピックは国を挙げた一大祭典。東京以外の地方自治体も外国人選手・観光客と触れあう機会が増え、日本全国をPRする絶好の機会となる。日本は20年までにどのような環境を整備すべきなのか。内閣官房2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室長の平田竹男氏に話を聞いた。
―20年にはオリンピックに関連した文化イベントが全国で行われる見通しです。
「大会組織委員会(森喜朗会長)が主に東京での大会運営に力を注ぐのに対し、当方は全国の自治体を巻き込み、日本全体で大会を盛り上げるのが役割だ。オリンピック開催中、ちょうど青森ねぶた祭など東北三大祭りが行われる。祭りは他の国にはない日本のパワーだ。こうした日本独自の文化を生かし、訪日外国人がリピーターになってくれるような取り組みが欠かせないだろう」
―多くの外国人観光客を受け入れるにはどのような環境整備が必要ですか。
「課題の一つである標識の英語表示などは、官民の有識者で構成する『多言語対応協議会』で議論を交わしている。例えば国道、都道、県道、区道がある中、どのように統一すべきかといった話がある。これ以外にもアジア人観光客に人気のラーメンや牛丼などといった『B級グルメ』、コンビニエンスストアをはじめとした流通まで、いかに外国語対応していくかが問われてくる」
「やるべきことは多いが、14年に訪日外国人は1300万人になることが予想される。この1年だけで300万人も増える。自治体は外国人受け入れにリアリティーを持ち始めており、受け入れ整備が必要だという意識は醸成されつつある」
―その他の課題は。
「ことしは猛暑だが、20年の東京オリンピックも相当暑くなることが予想される。選手が快適に競技に専念できるよう、暑さ対策を考えなければならない。例えば遮熱効果の高い塗装を競技場の屋根に施したり、霧を吹き付ける装置を設置したりする必要がある。良い技術が開発されれば世界にアピールできる上、将来、中東に輸出することも可能だ。民間のイノベーションに期待したい」
【竹田氏プロフィール】1982年横浜国大経営卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。資源エネルギー庁石油天然ガス課長、日本サッカー協会専務理事を経て2006年4月より早大大学院スポーツ科学研究科教授。13年10月より現職を兼務。大阪府出身、54歳。
【記者の目/外国人受け入れ対応の強化を】
為替の円安効果などにより、外国人観光客は急増している。20年に開催予定の東京オリンピックの“前哨戦”は始まったも同じ。「まだ6年」ではなく、「あと6年」しかないといった気持ちで、外国人受け入れ対応を強化していく必要がある。
(聞き手=大城麻木乃)
日刊工業新聞2014年08月13日 3面