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日産・ゴーン社長インタビュー。シェアリングに迷い?

 トランプ米次期大統領の政策動向など世界経済の先行き不透明感が高まるリスクがある中、日産自動車のカルロス・ゴーン会長兼社長に、今年の事業環境見通しや三菱自動車とのシナジー、自動運転やシェアリングを含む業界動向を聞いた。

 ―日産の今年の課題は。
 「資本提携した三菱自動車を改革しシナジーを生み出さないといけない。今期を最終年度とする中期計画『パワー88』の効果を測定する重要な年でもある」

 ―エコカーでのシナジーは。
 「ルノー・日産連合でプラグインハイブリッド車(PHV)を自前で開発する計画だったが三菱自との提携で止めた。三菱自のPHV技術を活用していく。そうすれば双方にとって利益になる。電気自動車(EV)はモーターなど要素技術とプラットフォーム(車台)を共通化する。技術を組み合わせるのはそれぞれが手がけるから車両(の個性)は異なる」

 ―今年の市場見通しは。
 「世界市場は成長する。中国は好調で米国も健全で高い水準を維持する。欧州の回復基調も継続する。原材料価格や為替の変動が激しくなりそうだが、多くの政府が投資に積極的で総じて業界にとって良い年になると思う」

 ―シェアリングが各地で拡大しており、自動車メーカーと配車サービスの提携が相次いでいます。
「今の動きは試験的で量販のビジネスではない。シェアリングが需要の多くを占めることはないが増えることは確かだろう。変化に順応するためにどの車メーカーも備えが必要になる」

 「これまでの安全性や快適性に、排ガスゼロ、つながる車、自動運転や(シェアリングのような)移動サービスも加わって競争が多岐にわたっている。自動運転は社会的メリットが大きく集中的に取り組んでいる」

 ―トランプ米次期大統領が環境規制の緩和や北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを主張しています。
 「どんな政策決定が下されようと排ガスを低減する世界的なトレンドは変わりはない。NAFTAは動きがあったらそこで考える。トランプ氏は米国第一主義で米国の利益保護はメキシコとの通商を守ることにつながる。懸念していない」
(聞き手=池田勝敏)
池田勝敏
池田勝敏 Ikeda Toshikatsu 編集局経済部 編集委員
自動車大手各社が配車サービス会社に出資するなどして、所有から利用の流れを捉えようとしている。しかし日産はまだこの流れにどう対応するか明確な方針を打ち出していない。今月米ラスベガスで開催する家電見本市「CES」でゴーン氏が初めて基調講演に臨む。車のあり方でどんなメッセージを発信するか注目される。

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