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非破壊検査の技術者を育てろ!航空機産業のサプライチェーン円滑に

政府が中小企業の参入を支援。長野県に訓練所を創設
非破壊検査の技術者を育てろ!航空機産業のサプライチェーン円滑に

米ボーイングのエバレット工場(ボーイング提供)

 政府は中小企業の航空機産業への進出を支援する。2017年度から順次、航空・防衛部品分野の国際認証「Nadcap(ナドキャップ)」対象の一つである非破壊検査の技術者を育成する訓練所を創設するほか、地方創生関連の交付金を活用して長野県などが飯田市に着氷試験や防爆試験設備を整備する。開発期間が長く、多額の費用を要する航空機産業は参入障壁が高い。政府支援をテコに中小企業を育て、航空機産業の国際的地位や競争力を底上げする。

 非破壊検査の教育機関は民間企業が運営する見通し。「NAS410」など国際基準に基づく「レベル3」技術者を座学や実技試験を通して育成する。

 Nadcapはサプライヤーの品質維持を目的とし、18の特殊工程を対象とする。中小企業庁の調べでは非破壊検査での取得が約4割と最も多かった。

 航空機業界では三菱重工業など機体メーカーが材料や治工具を調達し、切削などの加工外注先に支給する。加工工程ごとに部品メーカーと機体メーカー間で部品がやりとりされる「のこぎり型」取引が常態化している。

 加工を受託する中小企業がNadcap認証などを取得すれば複数企業が連携した部品の一貫生産が可能。機体メーカーの管理コストも減る見込みだ。

 一方、中小企業を含め国内メーカーが米ボーイングや欧エアバス、米ゼネラル・エレクトリック(GE)などと取引するには認証を受ける必要がある。ただ、試験設備が不足するなど課題が多い。

 長野県では、旧飯田工業高校(飯田市)の校舎跡地を利用し、飯田市が着氷試験設備を、県が防爆試験装置をそれぞれ国内で初めて整備する。利用料を払えば誰でも利用できるようにする方向。同県は航空機産業振興ビジョンを掲げている。

 民間航空機市場は年率5%成長が期待され、国内生産額は30年に3兆円を超える可能性がある。現状、国内航空機産業は自動車の30分の1程度の規模にとどまるが、部品点数は300万点超と波及効果は大きい。

 機体やエンジン、装備品では国際共同開発が進んでいる。このため人材レベルの底上げや試験設備拡充を通した、サプライチェーンの強化が求められている。
日刊工業新聞2016年12月28日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
地味だがとても重要な動き。最近は航空機産業への参入を目指し中小企業同士の連携も増え始めている。例えばYSEC(横浜市)と新潟メタリコン工業(新潟市)。それぞれの生産拠点がある新潟市内で、YSECが切削加工したエンジン部品を、新潟メタリコンが表面処理加工し、発注元の大手重工に納入するという。新潟メタリコンは2017年8月までに「Nadcap」を取得できる見通しで、取得を機に今回の連携をスタートさせることで両社が合意している。

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