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【突破せよ日立#04】製造現場を失った日立に強さはない

キーマンに聞く。「トップを目指す本気度が高くなかった」
【突破せよ日立#04】製造現場を失った日立に強さはない

青木氏

青木優和執行役専務インダストリアルプロダクツビジネスユニット(BU)CEO兼日立産業システム社長
 
 -2015年5月設立のインダストリアルプロダクツ社が、16年4月にインダストリアルプロダクツBUになりました。どこが変わりましたか。
 「旧インフラシステム社の遠心圧縮機・大型ポンプ・高圧インバーターなどと、旧電力システム社の高圧モーター・受変制御機器などの製品を集め、インダストリアルプロダクツ社を設立した。さらに主に小型産業機器を手がける日立産機システム(東京都千代田区)とも一体的に運営する」

 「今回の『社』から『BU』への移行では、分離していた営業機能も統合した。マーケットの情報を得て、どういった製品を開発すべきか、どういった提案をするべきか検討できる体制になった。(顧客と接する電力システムや鉄道といった)社内フロントBUへの製品供給はもちろんだが、当BUが直接顧客に製品提供するビジネスもしっかりやる」
 
 -日立グループは、製品ではなく、顧客課題を起点につくり上げたソリューションを提供する企業への脱皮を目指しています。製品の価値は下がっているのでは。
 「まずキャッシュを回収するという部分で製品の役割は大きい。インフラ関連の大規模プロジェクトはキャッシュを回収するまでに時間がかかる。これと比べ製品販売は短期でキャッシュを稼ぐことができる」

 「また製品に関する蓄積ノウハウがあるからこそ、優れたソリューションに仕上げられる。製造現場を失った日立を想像してみてほしい。そこに日立ならではの強さはないと思う」

 -フロントBUからは「ソリューションを構成する製品が必ずしも日立製である必要はない」との声も聞こえてきます。
 「“社内部品メーカー”として守られている方がおかしい。性能、価格競争力ともにライバルに負けないレベルになる」

 -日立の製品は世界トップシェアが少ないのが課題です。
 「これまで口では『トップを目指そう』と言っていたが、本気度は決して高くなかったと思う。正直に言って複合企業の弊害があった。しかし今は、印字装置、空気圧縮機などで世界トップを狙いたいと考えている。ただ必ずしも1位でなくても良い。首位にこだわりすぎて、利益を犠牲にしてしまっては本末転倒。1-3位のトップクラス入りが目標だ」

 -目標達成のための方策は。
 「IoT(モノのインターネット)技術の盛り上がりは追い風だ。当BUでは制御用コントローラー、無線通信デバイスなど『つなげる』機器と、モーター・インバーターやポンプなど『つながる』機器の両分野で製品を豊富にラインアップしている。(競合相手の)機械メーカーで通信、情報システムまでカバーできる企業は世界でも珍しく、産業界の足回りのIoT化に総合的に対応できるのは当BUの強みだ」

 -具体的なサービスは。
 「16年10月には空気圧縮機を対象としてIoT利用の遠隔監視サービスをスタートさせた。今後も多様な設備機器をIoTに対応させる。また日立のIoTプラットフォーム(基盤)『ルマーダ』を使って、例えば工場内にある30台の機器の稼働最適化といったサービスも実現したい」
(聞き手=後藤信之)
ニュースイッチオリジナル
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
取材では産業用インクジェットプリンターの技術などについて、青木執行役専務に熱心にご説明いただいた。モノづくりへのこだわりはとても強い。一方、「製品力のだけの競争ではなくなっている。(製品同士や製品とシステムとつなぐ)ネットワークの強さも重要」とも強調する。製品×IoTの今後の展開に期待したい。

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