2020年に向け、東京都に企業スポーツが根付き始めている!
着々と広がる「企業認定制度」
東京都が2015年度に創設した「東京都スポーツ推進企業認定制度」が企業に根づき始めてきた。20年までに都民のスポーツ実施率(週1回以上スポーツをする成人の割合)を世界トップレベルの70%へと引き上げるのが狙いだ。16年度は前年度比28社増の130社を認定。20年まで毎年更新し、特に社会への影響が大きい取り組みについてはモデル企業として表彰していく。15年度モデル企業の活動内容を紹介する。
東京都生活文化局の調査によると、20―40代の「働き盛り世代」でのスポーツ実施率は50%未満と低い。そこで、日常の大半を会社で過ごす従業員らに気軽にスポーツや気分転換などの身体活動を促し「スポーツを通じて会社が元気になる取り組みを支援する」(東京都オリンピック・パラリンピック準備局スポーツ推進部)ため、認定制度を始めた。
東京都のスポーツ情報サイト「スポーツ東京インフォメーション」のツイッターでは認定企業を随時紹介している。
そのうちの一つがじげんが取り組む「ダイエット同盟」。年1回、社員が提案するアイデア制度で採用され、実施中だ。ダイエットに参加志願した社員が体格指数(BMI)値、体脂肪率、骨格筋率の三つの指標を実施の前後で比べ3カ月間競う。上位3位までに入ると5000円分を補助し、スニーカーなど好きな商品購入に充てることができる。14年9月に始め、延べ100人弱が参加した。
参加した男性社員約50人の健康診断結果をみると「健康とされるBMI値は22だが、同23未満は前年比15%増の71%になり、過体重の人も1割減った。日頃の食生活の面に気をつける従業員も増えた」と経営推進部広報担当。今後も健康経営を推進していく構えだ。
三菱電機は14年度から日本オリンピック委員会(JOC)の就職あっせん事業「アスナビ」を活用し、指定強化選手6人を採用している。大会への冠協賛や、所有する体育館施設をパラスポーツ競技の練習場として無料開放することなどを通じて、障がい者スポーツ支援を活発に実施中だ。
10月からはパラスポーツ競技を見て体験してもらう「三菱電機Going Upキャンペーン全国キャラバン」を開始。石川、大阪、岡山、広島の4カ所を回り、車いすバスケットなどを体験してもらった。地方社員にも思いを伝え、障がい者スポーツを通じた共生社会の実現を目指すのが狙いだ。延べ1万人が来場し、参加した地元の子どもたちにも大変喜ばれた。
「20年で終わりとは思っていない。社員に気づきを与え、社会課題に対応できる人間性を養ってもらい、活動を通じて人間の幅を広げ、感性を高めることが大事だ」と営業本部東京オリンピック・パラリンピック推進部の担当者は語る。高齢化社会、多様性社会を理解する人材がレガシー(遺産)として残る。
イトーキは4年前から働き方と健康について研究をスタート。欧米での研究で、座る時間が長い人は脂質異常や糖尿病といった慢性疾患になりやすいことが分かった。そこで運動不足を補うため、スタンディングワークを取り入れ、職場の中での活動量を増やしている。メールや文書のチェックといった単純作業は立ったほうがスピードも効率もアップするという。
机面の高さを昇降できるデスクを使うある部門長は「フロア全体を見渡せるし、目線の高さもそろいやすくなるのでコミュニケーションが活発化し、明るくなった」と実感する。長時間オフィスにいる職場環境で身体活動にアプローチできるため、スポーツに無関心な社員を取り込む一つのきっかけにしたい考えだ。
<インタビュー あいおいニッセイ同和損保・倉田氏>
損害保険業界で唯一、2年連続で東京都スポーツ推進企業に認定された、あいおいニッセイ同和損害保険の倉田秀道経営企画部次長に、話を聞いた。
―健常者1人(女子サッカー)に加え、障がい者(水泳、車いすダンス、陸上、卓球など)8人の計9選手を雇用しています。
「応援されるだけでなく、選手自身が所属する地域や社内でどんな貢献ができるか、能動的に考え、双方向な関係になることを目指して雇用アスリートの『チームビルド懇談会』を実施している」
―内容は。
「年に4回、本社に来てもらい、研修を行っている。選手本人の意識を変えるため、コンプライアンスの考え方やトレーニングの仕方などを指導する。年1回は味の素の担当者を呼んでサプリメントや食事の取り方など栄養講習会を実施するなど、各回ごとに趣向を凝らしている」
―社員の意識はどう変化していますか。
「アスリートが参加する競技を観戦・応援した社員は14年度に456人だったが、15年度は1029人、16年度は10月末時点で1000人になった。観戦・応援した後、何か手伝いたい、理解したいと思い、運営ボランティアで参加する人も増えている」
―社外への展開は。
「地域企業を対象に毎年開く『AD倶楽部感謝の集い』で、市や県の障害者スポーツ協会と協力し、障がい者スポーツの紹介や体験会、当社の選手が講師を務める講演会などを行う。今年はこれまでに5カ所で実施した」
―06年に日本車いすバスケットボール連盟日本代表の公式スポンサーとして障がい者スポーツ支援を開始して以降、全国各地で障がい者スポーツ支援をしています。本業へつながる効果は。
「自治体や関連団体への提案活動は増えている。“地域密着”が当社の行動指針で、例えば各自治体が策定する地域防災計画の見直しを支援したり、県と防災協定を結んでいる。地域情報が入ってくるようになるのが大きなメリットだ」
―今後のアスリートの採用方針は。
「地域で活躍する、業務と競技を両立できる人を採用していく」
(文=大塚久美)
東京都生活文化局の調査によると、20―40代の「働き盛り世代」でのスポーツ実施率は50%未満と低い。そこで、日常の大半を会社で過ごす従業員らに気軽にスポーツや気分転換などの身体活動を促し「スポーツを通じて会社が元気になる取り組みを支援する」(東京都オリンピック・パラリンピック準備局スポーツ推進部)ため、認定制度を始めた。
東京都のスポーツ情報サイト「スポーツ東京インフォメーション」のツイッターでは認定企業を随時紹介している。
じげん、ダイエット競争で上位3位に賞金
そのうちの一つがじげんが取り組む「ダイエット同盟」。年1回、社員が提案するアイデア制度で採用され、実施中だ。ダイエットに参加志願した社員が体格指数(BMI)値、体脂肪率、骨格筋率の三つの指標を実施の前後で比べ3カ月間競う。上位3位までに入ると5000円分を補助し、スニーカーなど好きな商品購入に充てることができる。14年9月に始め、延べ100人弱が参加した。
参加した男性社員約50人の健康診断結果をみると「健康とされるBMI値は22だが、同23未満は前年比15%増の71%になり、過体重の人も1割減った。日頃の食生活の面に気をつける従業員も増えた」と経営推進部広報担当。今後も健康経営を推進していく構えだ。
三菱電機、パラスポーツ積極支援
三菱電機は14年度から日本オリンピック委員会(JOC)の就職あっせん事業「アスナビ」を活用し、指定強化選手6人を採用している。大会への冠協賛や、所有する体育館施設をパラスポーツ競技の練習場として無料開放することなどを通じて、障がい者スポーツ支援を活発に実施中だ。
10月からはパラスポーツ競技を見て体験してもらう「三菱電機Going Upキャンペーン全国キャラバン」を開始。石川、大阪、岡山、広島の4カ所を回り、車いすバスケットなどを体験してもらった。地方社員にも思いを伝え、障がい者スポーツを通じた共生社会の実現を目指すのが狙いだ。延べ1万人が来場し、参加した地元の子どもたちにも大変喜ばれた。
「20年で終わりとは思っていない。社員に気づきを与え、社会課題に対応できる人間性を養ってもらい、活動を通じて人間の幅を広げ、感性を高めることが大事だ」と営業本部東京オリンピック・パラリンピック推進部の担当者は語る。高齢化社会、多様性社会を理解する人材がレガシー(遺産)として残る。
イトーキ、スタンディングワークを導入
イトーキは4年前から働き方と健康について研究をスタート。欧米での研究で、座る時間が長い人は脂質異常や糖尿病といった慢性疾患になりやすいことが分かった。そこで運動不足を補うため、スタンディングワークを取り入れ、職場の中での活動量を増やしている。メールや文書のチェックといった単純作業は立ったほうがスピードも効率もアップするという。
机面の高さを昇降できるデスクを使うある部門長は「フロア全体を見渡せるし、目線の高さもそろいやすくなるのでコミュニケーションが活発化し、明るくなった」と実感する。長時間オフィスにいる職場環境で身体活動にアプローチできるため、スポーツに無関心な社員を取り込む一つのきっかけにしたい考えだ。
“地域密着”情報収集にメリット
<インタビュー あいおいニッセイ同和損保・倉田氏>
損害保険業界で唯一、2年連続で東京都スポーツ推進企業に認定された、あいおいニッセイ同和損害保険の倉田秀道経営企画部次長に、話を聞いた。
―健常者1人(女子サッカー)に加え、障がい者(水泳、車いすダンス、陸上、卓球など)8人の計9選手を雇用しています。
「応援されるだけでなく、選手自身が所属する地域や社内でどんな貢献ができるか、能動的に考え、双方向な関係になることを目指して雇用アスリートの『チームビルド懇談会』を実施している」
―内容は。
「年に4回、本社に来てもらい、研修を行っている。選手本人の意識を変えるため、コンプライアンスの考え方やトレーニングの仕方などを指導する。年1回は味の素の担当者を呼んでサプリメントや食事の取り方など栄養講習会を実施するなど、各回ごとに趣向を凝らしている」
―社員の意識はどう変化していますか。
「アスリートが参加する競技を観戦・応援した社員は14年度に456人だったが、15年度は1029人、16年度は10月末時点で1000人になった。観戦・応援した後、何か手伝いたい、理解したいと思い、運営ボランティアで参加する人も増えている」
―社外への展開は。
「地域企業を対象に毎年開く『AD倶楽部感謝の集い』で、市や県の障害者スポーツ協会と協力し、障がい者スポーツの紹介や体験会、当社の選手が講師を務める講演会などを行う。今年はこれまでに5カ所で実施した」
―06年に日本車いすバスケットボール連盟日本代表の公式スポンサーとして障がい者スポーツ支援を開始して以降、全国各地で障がい者スポーツ支援をしています。本業へつながる効果は。
「自治体や関連団体への提案活動は増えている。“地域密着”が当社の行動指針で、例えば各自治体が策定する地域防災計画の見直しを支援したり、県と防災協定を結んでいる。地域情報が入ってくるようになるのが大きなメリットだ」
―今後のアスリートの採用方針は。
「地域で活躍する、業務と競技を両立できる人を採用していく」
(文=大塚久美)
日刊工業新聞 2016年12月26日