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♪きっと来る~「次世代パワー半導体」はいつ来るのか?

2020年に13倍の1600億円超になるという市場予測の根拠
基板(ウエハー)に炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を使った次世代パワー半導体の市場が拡大する。SiCはトヨタ自動車が採用に積極的な姿勢を打ち出し、関連部材を含め実用化に向けた動きが活発化する。GaNも高耐圧製品の量産化の動きが出てきそうだ。低価格化をどう進めるかなど課題もあるが、このほど富士経済(東京都中央区)がまとめた調査では次世代パワー半導体の世界市場は、2020年には14年比12・9倍の1665億円に達する見通し。

 【技術的に成熟】
 基板にシリコン(Si)を用いる現在のパワー半導体は技術的に成熟しつつある。さらなる性能向上のため、シリコンよりも電子や熱の通りの良いSiCやGaNを基板を採用した次世代パワー半導体が注目を集めてきた。

 技術開発段階から実用化への大きな流れをつくったのは、トヨタだ。同社は14年5月、デンソー、豊田中央研究所(愛知県長久手市)と共同で、ハイブリッド車(HV)など電動車両向けのSiCパワー半導体の量産を20年をめどに始めると発表した。

 SiCパワー半導体は、高耐圧・大電流用途に向いており、モーター駆動やインフラシステムの電源などに採用が見込まれている。すでにローム三菱電機東芝、サンケン電気が実用化しているが、規模は小さい。トヨタが積極姿勢を見せたことで、「これまでSiCパワー半導体の本格普及がいつ始まるか様子見だったが、アクセルを踏み込める」と半導体メーカー幹部は話す。

 【今はほぼゼロ】
 その波及効果は、部材にも広がりそうだ。富士経済によると、SiCパワー半導体の発熱の課題解消につながる窒化ケイ素絶縁基板の世界市場は20年に14年比3・1倍の31億円に拡大する見通し。接合材として用いる焼結型素子の世界市場も今はほぼゼロだが、20年には50億円規模になると予測する。

 一方のGaNは小型化が容易であることと、高周波特性が強み。高速で電気を流したり止めたりするスイッチング電源などに採用が期待されており、徐々に実用化が進んできた。14年11月には半導体・電子部品商社のUKCホールディングスが、GaNパワー半導体業界で先行する米トランスフォーム(カリフォルニア州)に出資。今年1月にはトランスフォームが、富士通セミコンダクターの福島県会津若松市の生産子会社で電源用製品の量産を始めた。

 【600ボルト領域も】
 これまで各社は耐圧200ボルトまでの領域で製品化を図ってきた。今後、600ボルト耐圧領域向けを量産化する動きも加速する見通し。富士経済では、通信基地局などの情報通信機器電源、太陽光発電用パワーコンディショナー、産業用電源のほか、電気自動車(EV)向けの非接触給電などで採用が広がると見ている。
日刊工業新聞2015年04月21日 電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
市場拡大は自動車向けに採用が広がるか次第。ただそれは同時にコモディティー化するということ。 必ずしもデバイスメーカーにとってバラ色の世界ではない。

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