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みずほとソフトバンクがAIで仕掛ける融資革命の行方

銀行のビジネスモデルを覆す可能性も
みずほとソフトバンクがAIで仕掛ける融資革命の行方

佐藤みずほFG社長(左)と孫ソフトバンクグループ社長(9月15日)

 「日本のレンディング(貸し出し)ビジネスを変えていく大きな目的を持っている」。みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長の新事業への鼻息は荒い。傘下のみずほ銀行はソフトバンクとスマートフォンを使った新しい個人向け融資サービスを2017年前半にも始める。顧客の学歴や職歴、口座の入出金履歴などを人工知能(AI)を活用してビッグデータ(大量データ)分析する。個人の信用力をスコアリング(得点化)して、顧客ごとに貸出金利や上限額を決める。

 低金利環境で本業の融資での収益環境が悪化する中、ITを積極活用することで潜在需要の掘り起こしにつなげる狙いだ。申し込みから完了までスマートフォンで完結できるのが特徴だ。申し込みから30分以内で銀行口座にお金が振り込まれるという。

 事業モデルは消費者金融に近い。他のメガグループも参入している領域で競争は激しい。店舗を持たず、人員もほとんど置かないことで、経費を削減しながら、競争力のある金利を実現する。

 ソフトバンクが出資する米ベンチャー企業の技術を用いて、新しい審査モデルを構築する。AIで申込者が将来キャッシュフローを生み出す力などを予測する。銀行の従来の与信審査では貸し出せなかった若い層にも資金供給しやすくなる。

 孫正義ソフトバンクグループ社長は「将来の稼ぐ力を予測し、貸倒率を抑えての融資が可能になった。若くて預金をあまり持っていない人の留学や結婚などの夢をかなえる応援がしたい」と事業の新規性を説く。

 興味深いのは、自ら追加で個人属性や購買履歴などの個人情報を提供することで、信用力が増して、多くのお金を借りやすくなる可能性がある点だ。追加情報をAIで処理し、貸出上限額を引き上げたり、貸出金利を下げられたりするという。

 一方、課題になるのが個人情報を扱うリスクだ。佐藤社長は「個人が自ら情報提供するので、個人情報保護の問題は生じない」と胸を張る。とはいえ、スコアリングの精緻化と情報量は相関関係が見られるため、情報管理は重要になる。

 また、虚偽の情報を入力してスコアを上げようとしても、AIが虚偽を感知してスコアは上がらない枠組みになっているという。

 かつて大手銀行は中小企業向けに財務情報を機械的に貸し出し判断するスコアリング融資に相次いで参入した。決算書の見栄えを良くする企業が相次ぎ、事業性が悪化、現在は三井住友銀行を除き、撤退している。みずほ銀はAIの詳細な利用法は現段階で開示していないものの、どう有効活用するかが焦点になる。
(文=栗下直也)
                 

 
日刊工業新聞2016年12月19日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
みずほはAIやビッグデータの活用には銀行界でも積極的。店頭への人型ロボット「ペッパー」の設置やコールセンターにIBMの認知型コンピューター「ワトソン」を導入。今回、銀行の「本丸」の融資でのAIやビッグデータの事業化は既存の銀行のビジネスモデルを覆す可能性も秘めている。

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