羽田空港で、大量の荷物を中腰で上げ下ろしする作業…ロボ導入でどう変わった?
リムジンバスを運営する東京空港交通(東京都中央区、増井健人社長、03・3665・7117)は、サイバーダイン製アシスト装具「HAL(ハル)作業支援用(腰タイプ)」の本格的な導入を決めた。2015年9月から実証実験として羽田空港のバスターミナルのバス乗降場で、リムジンバスへの荷物の上げ下ろし作業にハルを使い、効果を検証していた。一定の効果が出たことから採用台数を増やす。
「作業者の負担軽減と作業効率化が期待できるだけでなく、女性の活躍や、丁寧なサービスにもつながる」と増井社長のハルにかける期待は大きい。
ハルを採用したのは、国際線の旅客が多い羽田と成田空港を結ぶ路線。乗客が多いことと、大きな荷物を運ぶ乗客がほとんどであることが理由だ。梅原達也取締役によると、羽田の乗降場には5分に1本のペースでバスが発車し、1本当たり15キログラム程度のキャリーバッグなどの荷物を20個以上上げ下ろしする必要がある。
バスの荷物スペースは低い位置にあり、中腰で奥側まで荷物を持ち上げ動かすのはかなりの重労働。関係者は「効率良く作業するには、どの荷物を先に入れ、どこに置くかといった経験と勘が必要」と話すが、重労働のため熟練者が長く働けないケースもあるという。
ハルは数多くの実証実験で腰痛の負担軽減効果の実感を得ている。神奈川県が介護施設に行ったアンケートでは、約8割の職員が「疲労感が減少した」と回答している。羽田の乗降場で働く赤井洋一郎さんも「ハルは荷物を上げるときの腰を伸ばす動きを支援してくれ、疲労が減る」という。
本格採用に向けて、東京空港交通はサイバーダインとハルの改良を進めた。ハルは身体に貼ったパットから、筋肉を動かす信号を読み取って動きをサポートする。パットは汗をかくとはがれてしまうことがあり、ベルトで信号を読み取るタイプも用意した。バッテリーも連続使用に耐えるよう、使い方の工夫と蓄電池の性能向上で対応している。現在はフル充電で連続3時間動く。
ただ、まだ改善点は残る。女性スタッフの玉那覇翔子さんは「小柄な女性だと多少重さで負担がある」という。女性向けに軽量化したハルの登場が待たれるところだ。また、レンタルで1台月10万円程度の費用が下がれば、利用者もさらに広がるだろう。細かいところでは、バスが発着する際にお辞儀をすると「まっすぐ立つよう力がかかってしまう」(スタッフの松田恵祐さん)ことも改善が必要だ。
東京空港交通は今回は10台を配備し、徐々に他の空港や路線に広げていく。増井社長は「車いすを使う利用者のサポートにもハルを生かせる。当社はスタッフ100人が『サービス介助基礎検定』を今年中に受講する予定で、ソフトサービスの向上を進めており、ハルは有効なツール」と積極的に活用していく方針だ。
(文=石橋弘彰)
中腰の重労働
「作業者の負担軽減と作業効率化が期待できるだけでなく、女性の活躍や、丁寧なサービスにもつながる」と増井社長のハルにかける期待は大きい。
ハルを採用したのは、国際線の旅客が多い羽田と成田空港を結ぶ路線。乗客が多いことと、大きな荷物を運ぶ乗客がほとんどであることが理由だ。梅原達也取締役によると、羽田の乗降場には5分に1本のペースでバスが発車し、1本当たり15キログラム程度のキャリーバッグなどの荷物を20個以上上げ下ろしする必要がある。
バスの荷物スペースは低い位置にあり、中腰で奥側まで荷物を持ち上げ動かすのはかなりの重労働。関係者は「効率良く作業するには、どの荷物を先に入れ、どこに置くかといった経験と勘が必要」と話すが、重労働のため熟練者が長く働けないケースもあるという。
ハルは数多くの実証実験で腰痛の負担軽減効果の実感を得ている。神奈川県が介護施設に行ったアンケートでは、約8割の職員が「疲労感が減少した」と回答している。羽田の乗降場で働く赤井洋一郎さんも「ハルは荷物を上げるときの腰を伸ばす動きを支援してくれ、疲労が減る」という。
女性向けに軽量化期待
本格採用に向けて、東京空港交通はサイバーダインとハルの改良を進めた。ハルは身体に貼ったパットから、筋肉を動かす信号を読み取って動きをサポートする。パットは汗をかくとはがれてしまうことがあり、ベルトで信号を読み取るタイプも用意した。バッテリーも連続使用に耐えるよう、使い方の工夫と蓄電池の性能向上で対応している。現在はフル充電で連続3時間動く。
ただ、まだ改善点は残る。女性スタッフの玉那覇翔子さんは「小柄な女性だと多少重さで負担がある」という。女性向けに軽量化したハルの登場が待たれるところだ。また、レンタルで1台月10万円程度の費用が下がれば、利用者もさらに広がるだろう。細かいところでは、バスが発着する際にお辞儀をすると「まっすぐ立つよう力がかかってしまう」(スタッフの松田恵祐さん)ことも改善が必要だ。
他の路線に拡大
東京空港交通は今回は10台を配備し、徐々に他の空港や路線に広げていく。増井社長は「車いすを使う利用者のサポートにもハルを生かせる。当社はスタッフ100人が『サービス介助基礎検定』を今年中に受講する予定で、ソフトサービスの向上を進めており、ハルは有効なツール」と積極的に活用していく方針だ。
(文=石橋弘彰)
日刊工業新聞2016年12月16日