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諏訪の中小企業と東工大が目指す“10万円の工場IoT”

「特急品」などに対応。中小向けの標準モデルになるか
 長野県諏訪市周辺にある中小企業と東京工業大学の出口弘教授は、低コストで製造現場にIoT(モノのインターネット)を導入する活動を12月に立ち上げる。小型ボードコンピューター「ラズベリーパイ」などを使い、IoTを活用した工場内の機械の稼働状況や異常の一元管理に取り組む。導入価格は最低10万円程度に抑える予定。地域の中小企業の導入を促して競争力を上げるとともに、IoT関連産業の振興につなげる。

 12月2日に、ものづくり支援センターしもすわ(下諏訪町)で「IoTカイゼン会」を立ち上げる。月1回のペースで開催し、諏訪市周辺の企業10社超が参加する見通しだ。会の事務局はロジカル・ワークス(岡谷市)が務める。

 勉強会では1万円以下の電子工作向けマイコンボード「アルドゥイーノ」や3万円以下のマルチモニターなどを用い、機械の状態など工場内のさまざまな情報をモニター1台で表示する「アンドン」を参加者が作成する。

 機械の追加や生産ラインの変更に対応しやすい通信モデルを採用する。来春以降には、機器の動作制御やロット単位の原価管理、「ブロックチェーン」と呼ばれる仮想通貨で使われるデータ分散管理技術を使って、生産履歴管理(トレーサビリティー)の実現を目指す。

 参加企業は勉強会で作成した機器やシステムを自社に持ち帰り、IoT導入を進める。また勉強会に参加するIT企業には、パソコン設定サポートサービスのように、製造業などがIoTを導入する際に機器の設定を支援するサービスに進出するよう後押しする。
日刊工業新聞2016年11月28日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
ラズパイを使っての実装は大手ではPoC (Proof of Concept:実現性検証) としての使われ方が一般的だ。しかし、結局大掛かりな仕組みは中小企業には不要かつ導入維持困難なのだからこれで十分な事業領域や企業もかなりあることだろう。 このくらいの金額感は中々大手中堅ICT企業が手を出しにくい所で、地場のIT企業と自治体が共同で支援していかざるを得ない所だとも言える。是非標準的なパターンと"IoT改善パック"のような横展開可能なパッケージにして、長野から他県へ販売すればなお投資分が回収できて良いと思う。 日本全国で多数の企業が困っていてニーズあるこの領域は、こうした先進事例をいかに安く早く簡単に導入して、遠隔で維持管理してあげられるかがキモであり、それに是非とも期待したい。

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