津波の予測技術導入進む。深海底に検知システム、微気圧振動のデータ公開へ
海洋機構は東北沖で継続すべり検出していた!
22日午前5時59分ごろ、福島県沖を震源とする地震があり、福島、茨城、栃木各県で震度5弱の揺れを観測した。太平洋側沿岸に津波が発生したが、幸い、今のところ大きな被害は報告されていない。
今月5日は「津波防災の日」だった。1854年11月5日に和歌山県を大津波が襲った際、村人が稲むらに火をつけて警報を発し、村民を避難させた「稲むらの火」の逸話が由来だ。津波による甚大な被害が起きた2011年の東日本大震災が制定の契機となった。過去の教訓を生かし、津波予測技術を防災に役立てる動きが企業や研究機関や企業、自治体で広まりつつある。
企業や自治体などの防災対策に生かされているのが、防災科学技術研究所の地震・津波観測監視システム「DONET」だ。海域で発生する地震や津波を常時観測・監視するために、南海トラフ周辺の深海底に設置した。
DONETは、地殻変動のようなゆっくりとした動きから大きな地震動まで、あらゆるタイプの海底の動きを捉える。主要動や津波が到達する前に、防災情報を発信できる。
三重県は、5月に開かれた伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)を機にDONETを活用した津波予測・伝達システムの運用を始めた。DONETが津波を検知すると、同県鳥羽市や同志摩市などへの「最早津波到達時間」や「最高津波高」などをシステムが計算。結果は同県庁防災対策部災害対策室のモニターに表示され、災害対策活動に活用する。
さらに観測点の2カ所以上で50センチメートルを超える津波を検知すると、沖合での津波観測情報や、高台などへの避難を呼びかける緊急速報メールを伊勢志摩地域内のスマートフォンなどへ配信する。
DONETの情報は和歌山県や気象庁、中部電力なども防災対策に導入している。「新たにDONETの利活用方法を検討している自治体や電力・鉄道事業者などもある」(防災科研地震津波火山ネットワークセンターの高橋成実副センター長)と、津波情報を防災に生かす取り組みが広がりつつある。
一方、日本気象協会は、大気中の微小な気圧の振動である「微気圧振動」を捉える「微気圧計」を使い、津波の早期検知に向けた研究に取り組む。微気圧振動は、津波に伴う海面の隆起・沈降や火山の噴火などで生じる。東日本大震災を引き起こした11年の東北地方太平洋沖地震では、津波が沿岸に到達する約12分前に地上で微気圧振動を捉えた。
この微気圧計は、岩手県大船渡市と三重県志摩地域に設置されている。今後は西日本にも設置し、観測態勢を強化する。また、観測した微気圧振動のデータを公開するウェブサイトを17年4月頃に開設する予定だ。
同協会事業本部防災ソリューション事業部の本間基寛専任主任技師は、「防災だけでなく、微気圧振動に関する研究にも役立ててほしい」と力を込める。
海で地震が発生した場合、まず津波の有無を警戒する必要がある。南海トラフ地震でも巨大な津波の発生が予想されており、1秒でも早い津波情報の発信が必要だ。
最新のシステムや研究成果を防災活動に導入し、被害を最小限に抑える体制が求められる。
一方、海洋研究開発機構地震津波海域観測研究開発センターの飯沼卓史研究員らは、2011年の東日本大震災を引き起こした東北地方の沖合のプレート境界断層において、地震の際に大きなすべりを起こした周辺領域に、人間には感じられないゆっくりとしたすべり(余効すべり)があることを明らかにした
東北大学との共同研究。成果は17日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に掲載された。
今月5日は「津波防災の日」だった。1854年11月5日に和歌山県を大津波が襲った際、村人が稲むらに火をつけて警報を発し、村民を避難させた「稲むらの火」の逸話が由来だ。津波による甚大な被害が起きた2011年の東日本大震災が制定の契機となった。過去の教訓を生かし、津波予測技術を防災に役立てる動きが企業や研究機関や企業、自治体で広まりつつある。
企業や自治体などの防災対策に生かす
企業や自治体などの防災対策に生かされているのが、防災科学技術研究所の地震・津波観測監視システム「DONET」だ。海域で発生する地震や津波を常時観測・監視するために、南海トラフ周辺の深海底に設置した。
DONETは、地殻変動のようなゆっくりとした動きから大きな地震動まで、あらゆるタイプの海底の動きを捉える。主要動や津波が到達する前に、防災情報を発信できる。
三重県は、5月に開かれた伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)を機にDONETを活用した津波予測・伝達システムの運用を始めた。DONETが津波を検知すると、同県鳥羽市や同志摩市などへの「最早津波到達時間」や「最高津波高」などをシステムが計算。結果は同県庁防災対策部災害対策室のモニターに表示され、災害対策活動に活用する。
さらに観測点の2カ所以上で50センチメートルを超える津波を検知すると、沖合での津波観測情報や、高台などへの避難を呼びかける緊急速報メールを伊勢志摩地域内のスマートフォンなどへ配信する。
DONETの情報は和歌山県や気象庁、中部電力なども防災対策に導入している。「新たにDONETの利活用方法を検討している自治体や電力・鉄道事業者などもある」(防災科研地震津波火山ネットワークセンターの高橋成実副センター長)と、津波情報を防災に生かす取り組みが広がりつつある。
来年には振動データを公開
一方、日本気象協会は、大気中の微小な気圧の振動である「微気圧振動」を捉える「微気圧計」を使い、津波の早期検知に向けた研究に取り組む。微気圧振動は、津波に伴う海面の隆起・沈降や火山の噴火などで生じる。東日本大震災を引き起こした11年の東北地方太平洋沖地震では、津波が沿岸に到達する約12分前に地上で微気圧振動を捉えた。
この微気圧計は、岩手県大船渡市と三重県志摩地域に設置されている。今後は西日本にも設置し、観測態勢を強化する。また、観測した微気圧振動のデータを公開するウェブサイトを17年4月頃に開設する予定だ。
同協会事業本部防災ソリューション事業部の本間基寛専任主任技師は、「防災だけでなく、微気圧振動に関する研究にも役立ててほしい」と力を込める。
海で地震が発生した場合、まず津波の有無を警戒する必要がある。南海トラフ地震でも巨大な津波の発生が予想されており、1秒でも早い津波情報の発信が必要だ。
最新のシステムや研究成果を防災活動に導入し、被害を最小限に抑える体制が求められる。
人間には感じられない余効すべり
一方、海洋研究開発機構地震津波海域観測研究開発センターの飯沼卓史研究員らは、2011年の東日本大震災を引き起こした東北地方の沖合のプレート境界断層において、地震の際に大きなすべりを起こした周辺領域に、人間には感じられないゆっくりとしたすべり(余効すべり)があることを明らかにした
東北大学との共同研究。成果は17日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に掲載された。
日刊工業新聞2016年11月4日/18日