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ネット証券、ロボアドバイザーで若者の資産運用取り込む

手数料を割安で株式売買はネットに。信託報酬の低下で同じ現象?
 インターネット証券各社が資産運用ビジネスの拡大に乗り出している。ネット証券は手数料が安く、個人の株式取引では既に大半のシェアを占める。だが長期資産運用に向いた投資信託やラップ(投資一任運用)は商品性が複雑なため、顧客にアドバイスできる対面証券に強みがあった。最近ではロボアドバイザー(コンピューターによる投資分析)など、ネットでの投信売買を支援する技術が発達。各社のビジネスを後押ししている。

 「サービス開始から3カ月。楽ラップの資産残高は50億円程になった」。楽天証券の楠雄治社長は、都内で開いた事業説明会で満足そうに語った。

 同社はネット証券として初めてロボアドを使ったラップを開始。手数料は年間1%以下、最低10万円からの投資が可能で、若年層の顧客を開拓している。さらに秋からは個人型確定拠出年金サービスも開始。こちらも手数料ゼロを打ち出し、業界の話題を呼んでいる。

 松井証券は1998年以来18年ぶりに投信販売を再開する。信託報酬の安いファンドをそろえ、ロボアド「投信工房」も用意。顧客のコストを約0・4%に抑え、500円からの積み立て投資サービスで、資産の少ない若年層の長期資産形成を支援する。

 SBI証券はフィンテック(金融とITの融合)ベンチャーのウェルスナビ(東京都千代田区)が開発した投資一任運用サービスを、自社の顧客に提供する予定。ロボアドを使い、世界中のETF(上場投資信託)に分散投資する内容。SBI証券の親会社であるSBIホールディングスの北尾吉孝社長は「世界中のロボアドを見たが、ウェルスナビが一番」と自信を示す。

 マネックス証券はロボアドラップ「MSVライフ」の提供を始めた。カブドットコム証券はロボアドを使い利用者に適した投信を提案するスマートフォンアプリをリリースしたほか、フィンテックベンチャーと協業し独自の資産運用サービスの開発を進めている。

 株式はどこの証券会社で売買しても一緒だが、投信やラップは会社ごとに取扱商品が違う。特に日本では商品開発力のある資産運用会社が大手証券会社系列であることが多く、投信やラップは野村証券や大和証券など大手に優位性があった。

 ただ昨年から、個人型確定拠出年金の制度改正などをにらみ、信託報酬の安い投信の開発が続出。さらにロボアドの技術開発が進んだことで、ネット証券でも資産運用ビジネスを手がける環境が整ってきた。

 松井証券の松井道夫社長は「手数料を割安としたことで個人投資家の株式売買はネットに移った。信託報酬の低下とロボアドの活用により資産運用ビジネスでも同じ事が起こる」と予見している。
日刊工業新聞2016年11月18日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
大手証券会社の投資一任運用(ラップ口座)は最低投資金額が300万円からで、若いサラリーマンが気軽に始められる金額ではなく、資産運用はお金持ちか老人のものとなっている。ロボアドが若年層の資産運用市場を作れるか、注目したい。 (日刊工業新聞経済部・鳥羽田継之)

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