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タッチパネル市場はフレキシブルと車載が競争軸に

サプライチェーンの構築の仕方が技術進化にとって重要
タッチパネル市場はフレキシブルと車載が競争軸に

日本航空電子の公式ホームページより

 タッチパネル市場はスマートフォン向けが80%を占めるが、一方でスマホ市場の伸び率は鈍化傾向にある。この影響を受けているのが、ディスプレーにタッチパネルを外付けする「アドオン型」だ。

 さらに、センサーをディスプレーに内蔵する「エンベデッド型」の需要が伸長しており、アドオン型のパイを奪い取っている。エンベデッド型は当初、高価格帯スマホに採用されたが、2015年には中価格帯以下まで普及。現在30%程度の搭載率は、20年には50%まで伸びる見通しだ。


 市場では価格競争が激化しており、大規模に投資してきたタッチパネルメーカーほど厳しい状況に置かれている。付加価値向上が業界のテーマになる中、注目されているキーワードが「フレキシブル」と「車載」だ。

 フレキシブルでは、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレーへの対応が当面の課題だ。耐熱性や樹脂系技術の導入が必要で、ハードルは高い。例えば韓国サムスン電子のスマホはエンベデッド型を採用していたが、生産技術の難しさからフレキシブル有機ELでは当初アドオン型を採用した。

 ただアドオン型は価格競争に陥りやすいため、タッチパネルメーカーやディスプレーメーカーとしては避けたい意向がある。エンベデッド型でも採用してもらえるよう、フレキシブルへの技術対応を行う方向だ。

(日本航空電子の全面透明タイプの車載用タッチパネル)

 フレキシブル対応で開発されているのはバリアーフィルム一体型やカバー一体型、偏光板一体型。バリアーフィルム一体型は韓国LGディスプレーが採用しているものの、部材削減へのニーズが強く、バリアーフィルムをなくしたいのが本音だろう。

 カバー一体型は車載や高級スマホの一部で採用が検討されているようだ。偏光板一体型の製品化は見えてこない。ただ18年頃には有機ELの本格普及と連動し、タッチパネルの新技術が台頭してきそうだ。

 車載向けでは高温、高湿、振動、温度変化への耐性が重要だ。また有機材料から発生するガスに対応した粘着剤も必要になる。これらの技術力に加え、自動車業界独特の商習慣や開発・保証期間の長さへの対応が差別化の要素になるだろう。

 市場の低迷などが課題になる中、タッチパネルメーカーは独自技術が求められる。ディスプレーメーカーとの開発段階での連携や、サプライチェーンの構築の仕方が技術の進化にとって重要だ。特にアドオン型は新技術の創出で付加価値が高まれば、需要が回復する可能性がある。

(SMKの10―34インチ曲面タッチパネル)

(文=大井祥子・IHSテクノロジー主席アナリスト)
日刊工業新聞2016年11月10日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
今やディスプレーはタッチパネル式であることが当たり前のようになってきた。これは裏を返せば市場の成熟が進み、差別化競争が過熱化するということ。ディスプレーメーカーも同じような立場に置かれており、今後は双方の連携強化が不可欠になる。サプライチェーンの囲い込み競争も激しくなりそうだ。

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