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「次世代LSIシンポ」は時代を映す!?米国大学の躍進と韓国サムスンの凋落

回路部門の論文採択の上位3つは米国大学。技術部門ではサムスンが初めてゼロに
 半導体の3大国際会議の一つで、大規模集積回路(LSI)の最先端技術が集結する「VLSI(超高密度集積回路)シンポジウム」が6月に京都で開かれる。デバイス&プロセス技術部門と回路部門の2部門があり、その両面から次世代LSIの方向性が示される。題目にはモノのインターネット(IoT)やロボット、スマートカーなど旬のテーマが並ぶ。微細化の行方とともに、システムの検討に向けた議論も盛り上がりそうだ。
 
 VLSIシンポジウムは日米が運営の中心を担い、ハワイと京都の2会場を交互に使い毎年開催されている。日米半導体摩擦の緩和を狙った技術交流の場として1981年に始まり、15年で開催35周年を迎えた。VLSIシンポジウム委員長を務める黒田忠広慶応義塾大学教授は、「日本の産業界や技術コミュニティーが主導し、世界にLSI情報を発信する」と意気込む。

 15年の「技術部門」の論文採択率は40%、「回路部門」は33%で、世界最高峰の会議としての水準を保つ。日本は技術部門で米国(24件)に次ぐ世界2位の地位を死守したが、その採択数は前回の京都開催時(13年)より少ない16件だった。

 回路部門では、米国(62件)が大学を中心に採択数を大きく伸ばした。日本は韓国(12件)に及ばず3位(11件)にとどまり、4位には台湾(10件)が迫る。「アジアは従来の『日本の1強』体制から、『日台韓の3強』体制に移行した」とVLSIシンポジウム事務局も認める。

 とりわけ近年は、企業に対して大学の躍進が目立つ。回路部門は大学の比率が約7割と高い。採択数のトップスリーは米大が占め、米インテルや米IBMがこれに続く。日本勢の上位は東北大学パナソニックでそれぞれ2件ずつ採択された。

 技術部門は企業からの採択数が5割超と多いものの、東京大学は4件でトップスリー入りした。韓国サムスン電子の採択論文が今年初めてゼロになったことは企業時代の終焉を示す一つの象徴と言えそうだ。

 VLSIシンポでは、論文発表に加え、世界の産業界や研究機関からも著名な講師を招く。日立製作所の矢野和男技師長が「IoTでお金を得る原理・超大規模幸福集積」、独ボッシュの副社長が「自動運転の頭脳―明日の乗り物向けエレクトロニクス」をテーマに講演する。

 ロボット分野では、産業技術総合研究所の比留川博久ロボットイノベーション研究センター長がLSIへの要求などについて語る。グーグルは、「グーグルグラス」「クロームブック」に次ぐ、新たなシステムへの挑戦に向けた戦略の一端を披露する予定だ。併せてIoTやビッグデータが開く「20年の半導体産業」の展望も議論される。
日刊工業新聞2015年05月19日 科学技術・大学面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
サムスンはこの3、4年ほど全社のリソース配分が完全に「スマホファスト」になり、半導体はやや後回しになされきた。それは事業面だけでなく研究開発のマインドにも影響を与えたのかもしれない。ただスマホ事業の失速で、半導体への回帰も見られだけに、数年後はまた違う結果も予想される。論文発表以外の講演はなかなか興味深いテーマだ。

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