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三井物産が海外市場も狙う「北海道タマネギ」のポテンシャル

農業法人とブランド作り。生活習慣病の予防効果高く、新たな機能性表示制度も追い風に
三井物産が海外市場も狙う「北海道タマネギ」のポテンシャル

北見市の畑で生産した「さらさらゴールド」

 北海道産のオリジナルタマネギを世界へ―。三井物産は北海道の農業法人と共同で、健康成分を豊富に含む機能性タマネギ「さらさらゴールド」の開発・生産・販売プロジェクトに参画している。自社の販売網や事業ノウハウを通じてブランド化・事業化を支援し、海外市場まで見据えた北海道ならではのビジネスに育て上げる狙いだ。
 
 【総合力生かす】
 「機能性野菜には、我々が商売をする上で重要と考える商品力がある。そこに我々の総合力を生かすことで面白い取り組みができると考えた」。三井物産北海道支社の浅居誠雄業務室主管は、商社として地域貢献につながる新事業の創生に取り組む中で、同プロジェクトに着目した理由についてこう説明する。

 さらさらゴールドは、がんや動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病の予防効果が期待される「ケルセチン」を通常のタマネギより3―4倍多く含む品種改良品で、種苗メーカーの植物育種研究所(北海道栗山町)が開発。同社が育てた種を北見市の農家で栽培し、三井物産が2014年10月から加工メーカーや首都圏の百貨店などに販売を始めている。
 
 地元産品を全国展開する上では、消費者の心をつかむようなブランド作りが不可欠。そこで三井物産はさらさらゴールドの商品タグやポスターをデザイナーに依頼し、おいしさやオシャレのイメージを盛り込むなど「新しい売り方をやりながら、ほかの商品との“違い”を持たせている」(浅居主管)という。

 【新制度追い風】
 こうしたブランド戦略に加えて、人々の健康意識の高まりを背景に販売は好調だ。タマネギだけでなく、ドレッシングやスープの原料、ホテルのレストランの料理にも採用され、14年の生産分90トンは15年3月までには完売する予定。15年は120トン程度を生産する計画で、その後も種作りを行うハウスの増設などを通じて生産能力を高め、17年には1000トンの生産量を目指す。

 また米国からも高い評価を受けており、今後の市場調査などを通じて海外展開も検討していく。国内では拡販に向けた追い風も吹きつつある。15年4月から始まる食品の新たな機能性表示制度により、現在は特定保健用食品(トクホ)など一部の食品にしか認められていない食品の効能や効く部位などの表示が、科学的根拠を持っていればほかの食品でも可能となる。

 浅居主管は、「新制度のスタートによって、消費者がさらさらゴールドにもっと興味を持ってくれる」と、商機の広がりを期待する。機能性を訴求するためのベストな表示方法を考え、15年産の商品から適用する方針だ。

 【重要な価格戦略】
 一方、ブランド化の確立に向けて価格戦略も重要となる。現在はインターネット通販と食品メーカーへの原料供給による直販のほか、小売店には野菜卸業者を通じて販売しており、価格を安くされてしまうことがあるという。ブランド力をさらに高めていく上では今後、いかに一定の価格帯を維持・管理していくかを考えていく必要がありそうだ。

 三井物産では、さらさらゴールドのほかにも、国内でミニトマトやベビーリーフの生産・販売を展開している。その中でも機能性野菜を手がけるのは今回が初めて。その意味では、事業創出による地域貢献だけでなく、同社の農業事業の新たな取り組みと捉えることもできる。そのため浅居主管は、さらさらゴールドの事業をまず軌道に乗せた上で「将来は、機能性野菜のラインアップを広げていきたい」と意気込む。
日刊工業新聞2015年04月06日 モノづくり面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
食品の健康機能性表示新制度が4月にスタート。新制度施行以降の新商品が店頭に並ぶのは、6月ごろになる見通し。これまで特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品しか認められていなかったが、自由度が高まることでメーカーなどは商品の特徴を消費者にわかりやすくアピールできるようになる。一方で、どこまで表現の自由度があるのか難しい。トクホとの区別など小売り側の対応も課題になりそう。

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