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老舗の小さな商店はなぜ生き残れるのか

成熟化経済時代に、小規模を強みに変える力
 中小企業の数は約381万社で、日本の全企業数の99%を占めている。また、日本の従業員の約7割が中小企業で雇用されている。

 規模の大きさが強さに直結しない時代がきている。一般的には、中小企業は大企業に比べて経営資源の脆弱(ぜいじゃく)性を語られることが多い。

 しかしながら、現実には大企業が必ずしも中小企業より優れているわけでなく、規模が小さい企業には小さいことの強みがある。

 逆に、経済の成熟化、需要の多様化、人口減少といった時代は、小さな企業にとって追い風となり得る。

 しかし、多くの小規模企業が時代の追い風を生かしきれていないのが現実である。小さくとも強い企業が共通して持つのは、際立った独自性である。

 独自性とは、他とは違うことでうまれた個性、つまり自社の強みのことである。消費者にも大規模量販店での買い物が好きな人もいれば、小さな店での買い物に魅力を感じている人もいる。

 小規模の強みを生かしたマーケティングでは、小さな店に惹(ひ)かれる人々をターゲットにする方が効果的である。

 客層の特性は、こだわり、個性、専門性を重視する消費者であり、店員のアドバイス、店員とのコミュニケーション志向、気に入った店は長く利用したいという関係性志向である。

 すなわち、顧客の期待に応えるためには「本物志向の非価格志向」「関係性志向のきずな力」「人的コミュニケーション力」の三つがポイントである。

 値段が同じなら鮮度の良いアドバイスを的確にすることで、お客の満足度は高まる。町の魚屋さんが「奥さん、煮つけならメバル、塩焼きなら、今日はアジがいいよ」と、的確に生の声の情報提供するようなことは大型店にはできない。

 小さな企業には大企業にはできない小規模の強みを生かしたマーケティングがある。ご用聞き、配達、量り売り、店内加工、旬の説明、適度な会話などである。

 この方が買い手にとって心地よいからである。消費者は、こういう心地よさを明らかにした店に集まり、人気が高いのである。

 小売りの将来を予想するのはなかなか難しいが、ヒューマン・タッチの昔風を大事にしている老舗商店が生き残っている現状から学ぶことが多くあると感じる。
(文=上野延城・日本経営士会)
日刊工業新聞2016年11月10日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
スーパーは書かれているような人的コミュニケーション力など小規模流通が持っていたものを捨て、セルフスタイル、低価格志向で伸びてきました。そのスタイルが転機を迎えているのかもしれません。ただ、接客を強化すればいいというものでもなさそうですが。

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