四国の4銀行が包括提携、次の地銀再編はどこだ?
阿波銀行、百十四銀行、伊予銀行、四国銀行は11日、包括提携した。4行の営業エリアである四国の「創生」をテーマに、協力して四国全域の活性化を目指す。約1年前から議論を積み重ね、今回の包括提携に至った。各行は経営の独立性は維持していく方針。具体的な取り組みは今後4行で検討組織を設けて協議する。
包括提携を「四国アライアンス」と名付け、産業活性化や雇用創出、地域資源を生かす組織の運営、四国ブランドの国内外への情報発信などを目指す。4行でのビジネスマッチングや海外展開支援も行う。証券子会社の活用や預金、個人ローン商品の共同開発、協調融資にも取り組む。事務業務などを集約して運営子会社化し、コストダウンを図ることも検討する。
四国地域は他地域に比べ、人口減少や少子化・高齢化などの先進圏として課題に着面している。また、金融機関は異業種参入による競争激化、マイナス金利政策がもたらした厳しい収益環境などに見舞われており、4行の競争関係を維持しつつ、それぞれの強みやノウハウを結集し協働していくことが有効と判断した。
4行の頭取が同日会見し、百十四銀行の渡邊智樹頭取は「経営の独立性は維持する」と述べ、将来の統合を否定した。一方、伊予銀行の大塚岩男頭取は「人事交流などもやろうと話している」と踏み込んだ内容にする意欲を示した。阿波銀行の岡田好史頭取は「住んでいるところが良くなることが一番うれしい」、四国銀行の山元文明頭取は「(高知の)地元の企業にも相乗効果を示せる」と提携による四国創生への期待感を示した。
人口減少や低金利の長期化で取り巻く経営環境が厳しさを増す中、地方銀行が経営基盤強化のため経営統合や組織再編などを積極化している。10月には1日に常陽銀行と足利銀行を傘下に置く足利ホールディングス(HD)が経営統合し、3日に西日本シティ銀行が持ち株会社体制に移行する。勝ち残りをかけた取り組みに各行とも力が入る。
常陽銀と足利HDが1日、経営統合する。新会社「めぶきフィナンシャルグループ(FG)」を立ち上げ常陽銀と足利銀は傘下に入る。統合後の総資産は約15兆円と地域金融グループで第3位に躍り出る。「統合によるシナジーを発揮」(常陽銀の寺門一義頭取)し、地域の活性化を目指す。
めぶきFGは社長に常陽銀の寺門一義頭取、副社長に足利HDの松下正直社長が就任する。本社は常陽銀東京営業部(東京都中央区)に置き、両行の本店所在地は変更しない。
持ち株会社の本社を都内に置くことには地元企業から不安の声もあった。だが、松下足利HD社長は今回の統合について2015年11月の会見で「地域の役に立つ金融機関になるため」と述べ、両行は統合決定後もあくまで地元を重視する姿勢を示してきた。
常陽銀は16年7月、水戸市とまちづくり全般に関する包括連携協定を締結。市内で事業創出を目指す企業を支援する融資制度などを新たに設けた。足銀も6月までに宇都宮、小山、下野の栃木県内3市などと商工振興などに関する連携協定を結んでいる。
茨城と栃木の両県は位置も隣接し、これまで経済や文化など多くの面でつながりがあった。11年の北関東自動車道の全線開通後はさらにモノの行き来が増え交流が深まった。
両県が得意とする農産物の品目も茨城は白菜やレンコン、栃木はイチゴやかんぴょうなどで競合せず、製品開発などで協力関係を築ける余地がある。両行は統合後、初めて合同で食やモノづくりに関する展示会などのイベントも複数回開く予定で、県境という垣根を越えて企業の取り組みを後押しする。
統合により茨城と栃木を中心に東京、千葉、埼玉、群馬などにわたって広域営業ネットワークが構築される。店舗数は常陽銀が179店舗、足利銀の153店舗。両行を合わせると332店舗、従業員数は約6700人となる。
寺門頭取は店舗網拡大を統合の「最大のメリット」としており、顧客向けの情報提供や利便性が一層向上するとみられる。このほか寺門頭取は「他の地域金融機関にも開かれた金融グループとする」と述べており、今後2行以外の地銀とも統合する可能性もある。
両行は事務手続きやシステム共通化などを推進。経費削減などで20年度までに150億円の相乗効果を見込む。また統合による業務などの効率化を図り、150人程度の人員を捻出し、顧客対応へシフトさせる予定。5年間で約15店の新規出店を目指す。
九州では10月3日、西日本シティ銀行の持ち株会社「西日本フィナンシャルホールディングス(西日本FH)」が発足。同行と長崎銀行のほか西日本信用保証、九州カード、西日本シティTT証券などを子会社化する。
西日本シティ銀行グループは従来、各社で機能強化や組織再編を行ってきた。しかし人口減少や情報通信技術(ICT)の進展が加速する中、新たなグループ経営体制を構築することで事業環境の変化に対処する。銀行の事業に関する規制緩和やフィンテック(金融とITの融合)を生かした取り組みがグループとして効果的に取り組めるようになる。
ほかにも、ふくおかフィナンシャルグループは長崎県の十八銀行と経営統合に向けた協議、検討を進める。17年4月に子会社化、18年に同グループで、長崎県が地盤の親和銀行と合併の計画だ。九州の地銀は福岡、長崎、熊本、鹿児島の各県で再編の姿をみせる。次は佐賀、大分、宮崎で動きがあるかが注目されている。
包括提携を「四国アライアンス」と名付け、産業活性化や雇用創出、地域資源を生かす組織の運営、四国ブランドの国内外への情報発信などを目指す。4行でのビジネスマッチングや海外展開支援も行う。証券子会社の活用や預金、個人ローン商品の共同開発、協調融資にも取り組む。事務業務などを集約して運営子会社化し、コストダウンを図ることも検討する。
四国地域は他地域に比べ、人口減少や少子化・高齢化などの先進圏として課題に着面している。また、金融機関は異業種参入による競争激化、マイナス金利政策がもたらした厳しい収益環境などに見舞われており、4行の競争関係を維持しつつ、それぞれの強みやノウハウを結集し協働していくことが有効と判断した。
4行の頭取が同日会見し、百十四銀行の渡邊智樹頭取は「経営の独立性は維持する」と述べ、将来の統合を否定した。一方、伊予銀行の大塚岩男頭取は「人事交流などもやろうと話している」と踏み込んだ内容にする意欲を示した。阿波銀行の岡田好史頭取は「住んでいるところが良くなることが一番うれしい」、四国銀行の山元文明頭取は「(高知の)地元の企業にも相乗効果を示せる」と提携による四国創生への期待感を示した。
日刊工業新聞電子版2016年11月12日
関東、九州で動き出した「統合地銀」
人口減少や低金利の長期化で取り巻く経営環境が厳しさを増す中、地方銀行が経営基盤強化のため経営統合や組織再編などを積極化している。10月には1日に常陽銀行と足利銀行を傘下に置く足利ホールディングス(HD)が経営統合し、3日に西日本シティ銀行が持ち株会社体制に移行する。勝ち残りをかけた取り組みに各行とも力が入る。
常陽銀と足利HD「あくまで地元のため」
常陽銀と足利HDが1日、経営統合する。新会社「めぶきフィナンシャルグループ(FG)」を立ち上げ常陽銀と足利銀は傘下に入る。統合後の総資産は約15兆円と地域金融グループで第3位に躍り出る。「統合によるシナジーを発揮」(常陽銀の寺門一義頭取)し、地域の活性化を目指す。
めぶきFGは社長に常陽銀の寺門一義頭取、副社長に足利HDの松下正直社長が就任する。本社は常陽銀東京営業部(東京都中央区)に置き、両行の本店所在地は変更しない。
持ち株会社の本社を都内に置くことには地元企業から不安の声もあった。だが、松下足利HD社長は今回の統合について2015年11月の会見で「地域の役に立つ金融機関になるため」と述べ、両行は統合決定後もあくまで地元を重視する姿勢を示してきた。
常陽銀は16年7月、水戸市とまちづくり全般に関する包括連携協定を締結。市内で事業創出を目指す企業を支援する融資制度などを新たに設けた。足銀も6月までに宇都宮、小山、下野の栃木県内3市などと商工振興などに関する連携協定を結んでいる。
茨城と栃木の両県は位置も隣接し、これまで経済や文化など多くの面でつながりがあった。11年の北関東自動車道の全線開通後はさらにモノの行き来が増え交流が深まった。
茨城・栃木が得意とする農産物で
両県が得意とする農産物の品目も茨城は白菜やレンコン、栃木はイチゴやかんぴょうなどで競合せず、製品開発などで協力関係を築ける余地がある。両行は統合後、初めて合同で食やモノづくりに関する展示会などのイベントも複数回開く予定で、県境という垣根を越えて企業の取り組みを後押しする。
統合により茨城と栃木を中心に東京、千葉、埼玉、群馬などにわたって広域営業ネットワークが構築される。店舗数は常陽銀が179店舗、足利銀の153店舗。両行を合わせると332店舗、従業員数は約6700人となる。
寺門頭取は店舗網拡大を統合の「最大のメリット」としており、顧客向けの情報提供や利便性が一層向上するとみられる。このほか寺門頭取は「他の地域金融機関にも開かれた金融グループとする」と述べており、今後2行以外の地銀とも統合する可能性もある。
両行は事務手続きやシステム共通化などを推進。経費削減などで20年度までに150億円の相乗効果を見込む。また統合による業務などの効率化を図り、150人程度の人員を捻出し、顧客対応へシフトさせる予定。5年間で約15店の新規出店を目指す。
西日本FTは「金融×IT」
九州では10月3日、西日本シティ銀行の持ち株会社「西日本フィナンシャルホールディングス(西日本FH)」が発足。同行と長崎銀行のほか西日本信用保証、九州カード、西日本シティTT証券などを子会社化する。
西日本シティ銀行グループは従来、各社で機能強化や組織再編を行ってきた。しかし人口減少や情報通信技術(ICT)の進展が加速する中、新たなグループ経営体制を構築することで事業環境の変化に対処する。銀行の事業に関する規制緩和やフィンテック(金融とITの融合)を生かした取り組みがグループとして効果的に取り組めるようになる。
ほかにも、ふくおかフィナンシャルグループは長崎県の十八銀行と経営統合に向けた協議、検討を進める。17年4月に子会社化、18年に同グループで、長崎県が地盤の親和銀行と合併の計画だ。九州の地銀は福岡、長崎、熊本、鹿児島の各県で再編の姿をみせる。次は佐賀、大分、宮崎で動きがあるかが注目されている。
2016年11月12日