国内スマホ販売に異変?SIMロック解除はアイフォーン独壇場に風穴を空けるか
15年度のスマホ販売見通しは4%増の2860万台。「格安スマホ」じわり広がる
2015年度は、スマートフォン端末販売の転機の年となりそうだ。特定の携帯電話会社(キャリア)のみに端末利用を制限する「SIMロック」の解除の義務化、仮想移動体サービス事業者(MVNO)による「格安スマホ」サービスの盛り上がりを背景に、米アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」の優位性が揺らぎ、競争環境が変化する可能性がある。MM総研はスマホがけん引役となり、15年度の携帯電話端末の総出荷台数は前年度比0・6%増の3810万台とわずかながら上向くと予想する。
【優遇策改定も】
MM総研の予測によると15年度の端末出荷の内訳は、スマホが同4・1%増の2860万台、従来型携帯は同8・7%減の950万台となる見込み。
この5月に契約者の情報を記録するSIMのロック解除が義務化され、短期的に影響が及びそうなのがアイフォーンだ。これまで各キャリアは、「実質ゼロ円」といった形でアイフォーンを優遇し販売してたが、SIMロック解除により他社への流出リスクが高まる。このため優遇策を改める可能性が高く、ほかの端末メーカーには拡販余地が広がる。
またMVNOの格安スマホサービスの台頭も見逃せない。MM総研は、今回の調査ではMVNOによるSIMフリー端末を対象としていないが、14年度の出荷を100万台と推定し、「さらに拡大していくことが想定される」とする。
【浮上への契機】
アップルの攻勢を前に苦戦を強いられてきた日本のスマホメーカーには、競争環境の変化を捉え浮上へのきっかけをつかむことが求められている。横田英明MM総研取締役は「関連サービスやソフトとセットにして端末の魅力を高めることが必要」と指摘する。
MM総研がまとめた14年度の携帯端末の総出荷は、同3・9%減の3788万台と3年連続で前年割れした。従来型携帯は同6・0%増の1040万台と7年ぶりのプラスとなったが、スマホが同7・2%減の2748万台と2年連続の落ち込みとなった。スマホ出荷では、アップルのシェアが56・1%に達した。
(日刊工業新聞社2015年05月19日 電機・電子部品・情報・通信面)
関連記事=格安スマホサービスは広がるか!?
スマートフォンを割安で提供する「格安スマホ」の仮想移動体通信サービス(MVNO)で、日本メーカーのスマホの採用が広がっている。シャープや富士通に続き12日には、VAIO(バイオ、長野県安曇野市)が同社初のスマホを日本通信が採用し20日から提供すると発表した。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」に押され、苦戦を強いられてきた日本のスマホメーカー。格安スマホという新市場を浮揚のきっかけにできるか。
日本通信の三田聖二社長は、「アップルに対抗できるブランドは『VAIO』」と自信を見せた。バイオフォンは米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド5・0」を搭載し、専用SIM(契約者情報記録カード)とセット提供する。多機能よりも本質機能を重視した設計やデザインを採用し、ビジネスを含めあらゆるシーンで使えるようにした。端末の分割払いと通信サービスを合わせて料金は、月額2980円(消費税抜き)から。一括の端末価格は5万1000円(同)。
2014年春にイオンが格安スマホのMVNOを始めて以来、同サービスの新規参入が相次いだ。従来型携帯を利用するシニアや主婦層の乗り換えニーズや、ITリテラシー(活用能力)の高い消費者の2台持ちニーズなどを発掘してきた。これまで端末には価格を抑えられる中国や台湾メーカー製を用意してきた。しかし、利用者の裾野が広がる中で、「ニーズが多様化してきた」(MVNO関係者)。このため割高ながら、使い勝手が良く、信頼感のある日本メーカーのスマホを取り扱う例が増えてきた。
バイオフォンが狙う対象は、価格に敏感だが、デジタル機器にこだわり、本質的機能を評価する人。「(潜在的ニーズの多い)ストライクゾーンのど真ん中」(福田尚久日本通信副社長)に拡販の照準を合わせる。
ニーズの多様化で日本のスマホメーカーが入り込む余地が広がってきたMVNO。メーカー側は「可能性のある市場」(富士通幹部)と評価する。従来の大手キャリアとのビジネスでは、メーカーはキャリアの意向に添ってスマホを開発する。これに対しMVNO向けビジネスではメーカーとしての「個性」を出しやすいからだ。
また大手キャリアはアイフォーンに対し、端末価格の割り引きなど手厚い優遇策を展開している。一方、MVNOでは、「国内メーカーが、アイフォーンと対等な勝負ができる」(MM総研の篠崎忠征アナリスト)と指摘する。5月には、特定のキャリアのみに端末利用を制限する「SIMロック」の解除が義務化され、MVNO市場が一層拡大する素地は整う。日本のスマホメーカーが、個性ある端末とソフトを提供し、消費者のニッチなニーズに応えていくことができれば商機は広がる。
【VAIO、スマホで成長目指す−アイデア創出・提携戦略カギ】
VAIOが業容の拡大に踏み出した。日本通信の支援を得て生み出した「バイオフォン」は、モノとしての使い心地に加え、固定電話の番号で発信できる機能などソフト面も充実させた。VAIOの核は「高密度実装技術、放熱設計技術、高いデザイン性」(花里隆志執行役員)。今後は、日本通信など他社と組み、通信サービスやソフトを組み合わせ、パソコンに限らないデジタル機器全般に事業機会を見いだしていく。
VAIOの事業の柱であるパソコンは世界的に市場が成熟化しており、安定成長には新分野への参入が不可欠。その際、「デジタル機器には通信が欠かせない」と関取高行社長は強調する。ITに限らず「モノのインターネット(IoT)も視野に入れる」(関取社長)。通信技術の獲得で、市場成長の見込める分野での商機を探る。
デザイン性、ハード機能の強みを生かし、通信とからめた魅力的なサービスを生み出していくことが必要。実現には独自の事業アイデアを創出できるかや、他社との提携戦略がポイントだ。
【優遇策改定も】
MM総研の予測によると15年度の端末出荷の内訳は、スマホが同4・1%増の2860万台、従来型携帯は同8・7%減の950万台となる見込み。
この5月に契約者の情報を記録するSIMのロック解除が義務化され、短期的に影響が及びそうなのがアイフォーンだ。これまで各キャリアは、「実質ゼロ円」といった形でアイフォーンを優遇し販売してたが、SIMロック解除により他社への流出リスクが高まる。このため優遇策を改める可能性が高く、ほかの端末メーカーには拡販余地が広がる。
またMVNOの格安スマホサービスの台頭も見逃せない。MM総研は、今回の調査ではMVNOによるSIMフリー端末を対象としていないが、14年度の出荷を100万台と推定し、「さらに拡大していくことが想定される」とする。
【浮上への契機】
アップルの攻勢を前に苦戦を強いられてきた日本のスマホメーカーには、競争環境の変化を捉え浮上へのきっかけをつかむことが求められている。横田英明MM総研取締役は「関連サービスやソフトとセットにして端末の魅力を高めることが必要」と指摘する。
MM総研がまとめた14年度の携帯端末の総出荷は、同3・9%減の3788万台と3年連続で前年割れした。従来型携帯は同6・0%増の1040万台と7年ぶりのプラスとなったが、スマホが同7・2%減の2748万台と2年連続の落ち込みとなった。スマホ出荷では、アップルのシェアが56・1%に達した。
(日刊工業新聞社2015年05月19日 電機・電子部品・情報・通信面)
関連記事=格安スマホサービスは広がるか!?
スマートフォンを割安で提供する「格安スマホ」の仮想移動体通信サービス(MVNO)で、日本メーカーのスマホの採用が広がっている。シャープや富士通に続き12日には、VAIO(バイオ、長野県安曇野市)が同社初のスマホを日本通信が採用し20日から提供すると発表した。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」に押され、苦戦を強いられてきた日本のスマホメーカー。格安スマホという新市場を浮揚のきっかけにできるか。
日本通信の三田聖二社長は、「アップルに対抗できるブランドは『VAIO』」と自信を見せた。バイオフォンは米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド5・0」を搭載し、専用SIM(契約者情報記録カード)とセット提供する。多機能よりも本質機能を重視した設計やデザインを採用し、ビジネスを含めあらゆるシーンで使えるようにした。端末の分割払いと通信サービスを合わせて料金は、月額2980円(消費税抜き)から。一括の端末価格は5万1000円(同)。
2014年春にイオンが格安スマホのMVNOを始めて以来、同サービスの新規参入が相次いだ。従来型携帯を利用するシニアや主婦層の乗り換えニーズや、ITリテラシー(活用能力)の高い消費者の2台持ちニーズなどを発掘してきた。これまで端末には価格を抑えられる中国や台湾メーカー製を用意してきた。しかし、利用者の裾野が広がる中で、「ニーズが多様化してきた」(MVNO関係者)。このため割高ながら、使い勝手が良く、信頼感のある日本メーカーのスマホを取り扱う例が増えてきた。
バイオフォンが狙う対象は、価格に敏感だが、デジタル機器にこだわり、本質的機能を評価する人。「(潜在的ニーズの多い)ストライクゾーンのど真ん中」(福田尚久日本通信副社長)に拡販の照準を合わせる。
ニーズの多様化で日本のスマホメーカーが入り込む余地が広がってきたMVNO。メーカー側は「可能性のある市場」(富士通幹部)と評価する。従来の大手キャリアとのビジネスでは、メーカーはキャリアの意向に添ってスマホを開発する。これに対しMVNO向けビジネスではメーカーとしての「個性」を出しやすいからだ。
また大手キャリアはアイフォーンに対し、端末価格の割り引きなど手厚い優遇策を展開している。一方、MVNOでは、「国内メーカーが、アイフォーンと対等な勝負ができる」(MM総研の篠崎忠征アナリスト)と指摘する。5月には、特定のキャリアのみに端末利用を制限する「SIMロック」の解除が義務化され、MVNO市場が一層拡大する素地は整う。日本のスマホメーカーが、個性ある端末とソフトを提供し、消費者のニッチなニーズに応えていくことができれば商機は広がる。
【VAIO、スマホで成長目指す−アイデア創出・提携戦略カギ】
VAIOが業容の拡大に踏み出した。日本通信の支援を得て生み出した「バイオフォン」は、モノとしての使い心地に加え、固定電話の番号で発信できる機能などソフト面も充実させた。VAIOの核は「高密度実装技術、放熱設計技術、高いデザイン性」(花里隆志執行役員)。今後は、日本通信など他社と組み、通信サービスやソフトを組み合わせ、パソコンに限らないデジタル機器全般に事業機会を見いだしていく。
VAIOの事業の柱であるパソコンは世界的に市場が成熟化しており、安定成長には新分野への参入が不可欠。その際、「デジタル機器には通信が欠かせない」と関取高行社長は強調する。ITに限らず「モノのインターネット(IoT)も視野に入れる」(関取社長)。通信技術の獲得で、市場成長の見込める分野での商機を探る。
デザイン性、ハード機能の強みを生かし、通信とからめた魅力的なサービスを生み出していくことが必要。実現には独自の事業アイデアを創出できるかや、他社との提携戦略がポイントだ。
日刊工業新聞2015年03月13日 電機・電子部品・情報・通信面