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ファナック会長「欧州でCNCのシェア拡大に全力をあげる」

稲葉善治氏インタビュー。受注は踊り場、為替と中国が2大ブレーキに
 ―コンピューター数値制御(CNC)装置の受注状況は。
 「国内は政府の優遇税制などの効果で比較的堅調。問題は為替変動と中国経済の減速だ。これらが2大ブレーキとなり、全体的には踊り場と言える。しばらくこの状態が続き、回復にも少し時間がかかるだろう。中国減速の影響は日本にも及んでいるが、それ以上に台湾や韓国への打撃が大きい。また、米州では工作機械メーカーが少ないため、我々ができることは主に自動車、航空機関連のユーザーに対する働きかけになる。その中では航空機向けが特に好調だ。一方、欧州ではシェアがまだ低い。シェアアップのため全力を挙げている」

 ―ロボットはどうですか。
 「日本、米州、欧州、中国などあらゆる地域で好調が続いている。現在、生産能力は月5000台だが、この水準を超える時期は近い。増産体制の整備が急務だ」

 ―2017年春から小型工作機械を生産する筑波工場(茨城県筑西市)でもロボットを作る計画です。
 「当面は自動車向けの中・大型ロボットを本社工場(山梨県忍野村)と筑波工場の両方で生産することになる。従来以上に、しっかりと納期に対応できるようになるはずだ」

 ―工場用IoT(モノのインターネット)基盤「フィールド・システム」の投入が目前に迫っています。
 「今回のJIMTOFでファナックのIoTを大いにアピールしたい。従来のデモを、さらに進化させて展示する。ポイントは、我々の製品以外も“つながる”ということ。当社の製品だけで工場は成り立たないからだ。12月に第1弾を投入し段階的にアプリケーションを拡充していく。来春の自社展示会では、より充実した内容を紹介できると思う」

 ―そのほか、JIMTOFで打ち出すテーマは。
「ロボットなど工作機械の周辺で使う機器を一括提供する『クイック&シンプル・スタートアップ・パッケージ(QSSP)』の展示にも力を入れる。ケーブルや取付架台なども一緒に提供するため、ユーザーは素早く簡単に自動化システムを導入できる。コスト面でもメリットが出るように、シンプルな機器をそろえている」

【記者の目・欧でのシェア拡大が焦点】
 10月、CNCを生産する壬生工場(栃木県壬生町)が稼働開始した。新工場の強力な供給力を、存分に活用したいところだ。そんな中、伸びしろのある欧州において、CNCで独自動車大手のダイムラーに入り込んだ意義は大きい。この実績を、部品メーカーなどへどれだけ水平展開できるかが焦点となる。
(聞き手=藤崎竜介)


日刊工業新聞2016年11月2日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 壬生工場は初期投資額が約1000億円の戦略拠点。フル稼働すれば、CNCの供給能力は従来比40%増の月3万5000台に高まる。CNCで主力のアジア市場が総じて低迷する中、欧州でのシェアアップは稼働率を確保する上でも重要な命題となる。 (日刊工業新聞第一産業部・藤崎竜介)

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