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寒くなると飲みたくなる“黒”…大手ビール各社、黒ビール市場拡大なるか?

寒くなると飲みたくなる“黒”…大手ビール各社、黒ビール市場拡大なるか?

年末商戦が盛り上がるか(サントリービール「プレミアムモルツ」の黒ビール)

 寒くなる季節を控えて、大手ビールメーカーが“黒ビール”に力を注いでいる。サントリービールは10月4日に「ザ・プレミアム・モルツ〈黒〉」を発売。年間販売目標の8万ケース(1ケースは大瓶20本換算)に対し、3週間足らずで6万4000ケースを売り上げた。アサヒビールも12月6日に、「アサヒスーパードライ ドライブラック」の中身と缶デザインを刷新して発売する。キリンビールとサッポロビールも黒ビールを発売済み。年末商戦で、ビール各社のつばぜり合いが激しくなる。

注力するのは「コクと風味」


 「想像以上にファンが多かったことに驚いている」と、サントリーホールディングス(HD)の担当者は話す。ザ・プレミアム・モルツ(プレモル)黒は、上品な香ばしさを持つ黒麦芽を用いるとともに、麦汁を高温煮沸する工程を2回繰り返す「ダブルデコクション製法」を採用。豊かなコクと深い味わいを実現した。350ミリリットル缶や500ミリリットル缶と別に、通常のプレモルや「香るエール」と組み合わせた3種飲み比べセットも発売。需要を喚起している。

 アサヒビールの「ドライブラック」刷新は5年ぶり。“スーパードライにブラック登場”のうたい文句で2012年に発売。ドライ独特のキレ味を特徴としたが、刷新でロースト麦芽とカラメル麦芽の配合を見直し、コクや風味などを強化する。

新規顧客をつなぎ留められていない


 黒ビールで、キリンビールは「一番搾りスタウト」や輸入ビールの「ギネス」、サッポロは「ヱビスプレミアムブラック」をそれぞれ販売している。淡麗なピルスナービールの味に比べ、黒ビールは深いコクや香りが特徴。寝る前にゆったりと飲む酒に向いている。今回、中身を刷新するアサヒは「黒ビールは市場で新しい商品が登場するたびに規模が拡大し、翌年から縮小する構図が繰り返されている」と話し、拡大過程で流入した新規顧客をつなぎ留めることが肝要だと指摘する。刷新は「黒ビールらしさがやや乏しい」という顧客の声を反映し、リピーター需要を獲得する狙いだと強調する。

目新しさで購入してくれる?


 店頭で見かけることが多い黒ビールだが、実はビール全体に占める割合は1%程度。少量醸造のクラフトビールと、ほぼ変わらぬ市場規模だ。ただ、寒い季節を迎え、“家飲み”の需要が盛り上がることと、クリスマスや年末パーティー需要、クラフトビールブームなどの明るい材料もある。若者層や女性が“目新しさ”を求め、黒ビールを新たに購入しても不思議ではない。

 キリンは「一番搾りスタウトやギネス缶の売り上げは前年同期比マイナスだが、ギネス『エクストラスタウト』瓶は9月までの累計で同3%増になっている」と明かす。

 各社の戦略効果が、ジワリと出てきた。
(文=編集委員・嶋田歩)
日刊工業新聞2016年11月2日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
黒ビールはどっしりした風味なので食べ合わせる料理を選ぶことや、一杯飲むとけっこうな満足感があることも、需要が少ない理由かもしれません。邪道かもしれませんが、ピルスナー系とハーフ&ハーフにすると香ばしい風味を残しつつ、するする飲めるので結構好きです。

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