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アジアで和菓子は広がるか?浜松市の老舗和菓子屋5代目の挑戦

実演で認知度上げ、日本食レストランやホテルへも提供
アジアで和菓子は広がるか?浜松市の老舗和菓子屋5代目の挑戦

シンガポール高島屋で和菓子を販売する巌邑堂のブース

 「日本の文化である和菓子を海外に広めたい」―。浜松市の老舗和菓子屋、巌邑堂(がんゆうどう)の5代目社長、内田弘守氏はシンガポールの日系百貨店などで和菓子を販売している。アジアで和菓子製造拠点新設も目指す内田社長に現状や今後の展開を聞いた。

栗入りどら焼き、いちご入りの大福が好評


 ―外国人になじみの薄い和菓子を海外で販売するきっかけは。
 「2002年から4年間、東京都青梅市の和菓子屋で修行していた際に、外国人対象の茶会に参加した。『おいしい』と喜ばれ、和菓子を海外に広めたいと思った。取引のある浜松信用金庫に相談したところ、シンガポールで12年に開いた食品見本市への参加を勧められ出展、和菓子作りの実演もした」

 ―シンガポール高島屋で和菓子を販売しています。
 「玉川高島屋(東京都世田谷区)で当社の和菓子を販売していたので、高島屋にシンガポールの店でも販売させてほしいとお願いした。13年から春と秋の年2回、それぞれ2週間、シンガポール高島屋で販売している」

 ―反応は。
 「初めて食べる人が多く、当初の反応は今一つだった。ただ、和菓子を作る実演では多くの人が見に来てくれたことで認知度は徐々に上がり、今春の売上高は当初の2倍に増えた」

 ―販売価格と品ぞろえを教えてください。
 「平均価格は1個5シンガポールドル(約370円)と、日本に比べ1・5倍。顧客はシンガポール人が8割を占める。茶会で使う高級和菓子やどら焼き、大福などを販売している。昨年発売した栗入りどら焼き、いちご入りの大福が好評だ。シンガポールで販売を始めて3年半がたち、シンガポール人の好みが分かってきた。14年からは現地で和菓子教室を開いている」

 ―シンガポールの日本食レストランと販売契約を結びました。
 「当社製品を購入したシンガポール人から『私が経営している日本食レストランにデザートとして置きたい』との要請があり、14年から提供している。2週間に1回、日本から飛行機で運んでいる。シンガポールのマンダリンホテルにも13年から年1回、パーティー用に和菓子を提供。1回当たり400―500個の注文がある」

 ―アジアでの生産を検討しています。
 「本物の和菓子を現地で作りたい。タイで和菓子生産を検討中だ。現地企業と合弁で小規模工場を造り、早ければ来年夏から生産を始めたい。タイは日本人が多いので当面はタイで販売し、いずれ輸出もしたい」
(聞き手=アジアジャーナリスト・山川裕隆)
【会社概要】
▽創業=1871年▽従業員=11人▽年間売上高=約1億円▽事業内容=和菓子製造・販売
日刊工業新聞2016年10月28日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
日本人が多いシンガポールでも、「顧客はシンガポール人が8割」ということに驚きました。アジア各国にも豆を使ったスイーツや餅に似た食べ物もあることから、親和性は高いのかもしれません。見た目もユニークなので、アジアだけでなく世界中で広まる可能性がありそうです。

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