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NECとGE、100年の時を経た提携

日本のデジタル・トランスフォーメーションのけん引役になれるか
NECとGE、100年の時を経た提携

岩垂氏(最左)とエジソン・マシン・ワークス社のエンジニア(1887年3月撮影、Museum of Innovation & Science提供)

 NECと米GEデジタル(コネティカット州)は26日、IoT(モノのインターネット)分野で包括提携したと発表した。NECが培ってきたシステム構築(SI)や人工知能(AI)の技術と、GEがグローバル展開する産業用基本ソフト(OS)「プレディックス」の導入ノウハウなどを融合する。併せてNECは自社のサプライチェーン(供給網)の一部にプレディックスを導入するほか、2017年度中に専門の認定技術者を100人育成する。

 両社はIoT分野での新たな価値創造に加え、人材・サポート体制や産業機械向けで必須のセキュリティー対策など広範囲で協業する。具体的にはプレディックスを活用したサプライチェーン管理、認定技術者の育成・研修、保守・メンテナンス、サイバーセキュリティーなど六つの領域に照準を合わせ、今後のあり方を協議する。

 同日都内で開いた会見で、米GEデジタルのデンジル・サミュエルスグローバルアライアンス責任者は「プレディックスを日本企業に提供する上でNECが持つ信頼性と技術力は重要だ」と提携の意義を強調。榎本亮NEC執行役員は「インダストリアルIoTは1社では実現できない。サプライチェーンのグローバル展開などGEに学ぶことは多い」と語った。

 販売目標は両社とも非公表としたが、NECはIoT関連事業で20年までに売上高3000億円を目標としており、「今回の提携は目標達成を前倒しするものだ」と言及した。

 GEは米国のIoT業界団体「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)」の中核メンバーであり、プレディックスにはGEのノウハウが結集されている。プレディックス上で稼働するアプリケーション(応用ソフト)を通して、産業機器同士の接続やデータ収集・分析、リアルタイムな知見などが可能となる。

 NECはSIサービスに加え、人工知能(AI)など要素技術の一部をクラウド利用が可能な「マイクロサービス」として提供し、GEが運営するプレディックス開発者用のグローバルサイトに提供する。第1弾として映像認識技術からサービス提供する予定。

(NECの榎本執行役員<右>とGEデジタルのサミュエルスグローバルアライアンス責任者)
 NEC創設者の岩垂邦彦氏は、GEの創始者であるトーマス・エジソンのもとで電気・電信技術を習得した。帰国後、日本電気(現NEC)を設立する前はGE製品の販売代理業をしていた因縁もある。

日刊工業新聞2016年10月27日の記事に加筆
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
GEのPredixが日本にもじわじわと浸透しはじめた。LIXILなどでも導入されていたが、今回はITベンダーであるNECが自社導入を通じた他社展開で包括的かつ本格的な一手を打ってきた。独占契約ではないようなので今後他のSIerも後に続く可能性は考えられる。 かつてERP導入が日本市場を席巻したように、今度はインダストリ領域で強いプラットフォームの導入が進む方向性が見えてきた。日本企業独自のプラットフォームはまたもや生まれないかも知れないという懸念はあるものの、すでに巨大企業で確立された経験価値のプラットフォームから学び、新たな事業を早く創造しようとする姿勢は評価されるべきだろう。

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