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au未来研究所はスマホの次を発明できるか。第1弾は“IoT靴”

よみうりランドの迷路アトラクションに導入。消費者が体験する場を広げる
au未来研究所はスマホの次を発明できるか。第1弾は“IoT靴”

子どもの履くIoT靴が地面の色などを感知し、その情報を受信したスマホから音が鳴る

 KDDIは次世代のIoT(モノのインターネット)製品を生み出すプロジェクト「au未来研究所」で試作した製品の実用化に乗り出した。第1弾として色を識別したり感圧したりするセンサーを内蔵した子供用IoT靴を遊園地のアトラクションに導入。他の試作品も一般販売などを検討していく。未来のIoT製品が体験できる場を提供し、通信会社としてIoTが一般の消費者の生活に浸透する土壌を作る。(葭本隆太)

 フームアドベンチャーの池を渡るエリア。子どもの履くIoT靴が地面の色などを感知し、その情報を受信したスマホから音が鳴る

 「ピョン、ピョン、ビチャッ」―。IoT靴と連携したスマートフォンから音が鳴る。よみうりランドが新設した迷路アトラクション「FUMM ADVENTURE(フームアドベンチャー)」内にある、葉っぱの上を跳んで池を渡るエリアだ。

 同アトラクションは子供がIoT靴を履き、それと連携したスマホを親が持って親子ペアで楽しむ。IoT靴が足の動きや地面の色を感知して、その情報をスマホが受信すると音や映像が流れる。池を渡るエリアでは葉っぱの上を跳ねたり池に落ちたりする音が鳴る。

 フームアドベンチャーは複数のエリアをクリアしながらゴールを目指す。各エリアはIoT靴の機能を使って演出されており、よみうりランド遊園地事業本部の曽原俊雄副本部長は「IoTにより遊園地業界が発展する可能性を感じられる」と強調する。

 au未来研究所は『スマホの次を発明する』をテーマに活動する。生活の「衣食住」と関連付けながら消費者が参加してアイデアを形にする場(ハッカソン)を設け、コンセプトモデルを提案してきた。

 ただ、生活関連の製品を提案しながら「モデルを提示するだけで消費者の生活に寄り添い切れていない」(KDDIデジタルマーケティング部の塚本陽一部長)という面があった。このため消費者が生活の中で体験できるように実際の製品などとしての提供を決めた。

 その第1弾がIoT靴だ。「IoTにより新たな価値が提供できる」と考えたよみうりランドと連携が成立し、アトラクションに導入した。研究所では他にも抱きしめたり頭をなでたりして遠くに住む家族に思いを伝えるぬいぐるみなどを提案している。今後はこうした製品の一般販売などを検討し、消費者がIoT製品を体験する場を広げていく。

 塚本部長は「IoTは技術が前面に出ており一部のリテラシー(活用能力)の高い人のみが恩恵を受ける形に陥りやすい」と指摘した上で「(我々の提案を体験することによって)一般の消費者も自然に使えて生活が豊かになることを感じてほしい」と力を込める。同研究所の製品を体験することにより消費者のIoTに対する関心が高まるか注目される。
日刊工業新聞2016年10月26日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
もともとウエラブルやIoTと靴の親和性は高い。ナイキやアディダスも先進的な研究開発をしている。シューズメーカーなどとがっつり組んでみるのも面白い。

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