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時代遅れではない!「水力発電」は再生可能エネルギーのエースになりうる

<情報工場 「読学」のススメ#16>『水力発電が日本を救う』(竹村 公太郎 著)
**「水力発電は時代遅れ」という思い込みは捨てるべき
 人間は、ともすると「思い込みの罠」にハマりがちだ。心理学では「認知バイアス」という用語が使われるが、ある情報が正しいといちど思い込むと、無意識のうちにその他の可能性をことごとく排除してしまう。現代のような情報過多の時代には、思い込みによって一部の情報のみを受け入れるようにした方が、頭脳を酷使せずにすむ、といったこともあるのかもしれない。

 2011年3月11日の東日本大震災と原発事故が発生して以来、エネルギー、とりわけ電力をどのように確保していくかの議論が百家争鳴のごとくなされてきた。ネット社会がそれに拍車をかけ、さまざまな意見や情報が飛び交った感がある。

 再生可能エネルギー(再エネ)の可能性についても、そのメリット・デメリットがいろいろな場所で議論されている。再エネによる発電には多種多様な方式があるが、主に議題や話題にのぼるのは太陽光発電と風力発電が多い。これらについては、設置場所や発電効率などの難点が指摘されている。

 再エネ=太陽光 or 風力、というのは、多くの日本人の「思い込み」ではないだろうか。実はそのほかにも有望な選択肢は存在する。中でも地熱発電や水力発電は、太陽光や風力よりも日本特有の地形や地理的条件を十二分に生かすことができる。とくに水力発電は古くからある発電方式であり、すでに全国に施設(ダム)が存在し、技術も確立している。『水力発電が日本を救う』(東洋経済新報社)は、この水力発電の高いポテンシャルを指摘し、上手に使うことで日本のエネルギー事情が大幅に改善されることを主張している。

 同書の著者、竹村公太郎さんは、1970年に当時の建設省に入省以来、2002年に国土交通省を退官するまで、一貫してダム・河川事業の専門家として現場に関わってきた。現在は日本水フォーラム事務局長として、水力発電を見直しを促す講演活動などを積極的に展開している。

 この本を読むと、「水力発電なんて時代遅れだ」というのは、典型的な日本人の「思い込み」であることがよくわかる。そう断じる人の頭には「ダムに沈む村」を悲しげに見つめる村人たちの顔が浮かんでいるかもしれない。
 竹村さんの主張は、何も「もっとダムを増やそうではないか」というものではないのだ。「今あるダム」を有効利用することで大幅に発電量を増やせると言っている。

 では、どうするのか。竹村さんの主張をまとめれば、その策は大きく分けて三つある。(1)多目的ダムの運用変更、(2)既存ダムのかさ上げ、(3)発電に使用されていないダムでの水力発電の実施、である。
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冨岡 桂子
冨岡 桂子 Tomioka Keiko 情報工場
日本の発電のうち、水力発電が占める割合は、約9%(2016年エネルギー白書より)。これは、黒部ダムが完成した1975年から多少の増減はあるにしても、ほとんど変わっていません。もし、既存のダムを使った水力発電に余地があるなら、大きな資産を見過ごしてきたことになります。水力エネルギーが注目されることを期待したいと思います。

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