サムスン、発火問題でスマホ事業が過去最低の利益水準に
サプライヤーでは原因を想定しきれない!?日本の電子部品への影響どこまで
韓国のサムスン電子が、最新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」の生産・販売を中止した。同社は発火問題が発覚後、早々に原因を電池として無料の回収・修理(リコール)を実施して幕引きを図ったが、交換後の製品でも発火が相次ぎ、原因を特定できないまま生産・販売中止に至った。今後、同社のスマホ販売やサプライチェーンへの影響が懸念される。
12日付の韓国紙・中央日報はサムスンについて、全世界で販売した180万台の交換や払い戻しなど直接的損失だけで少なくとも3兆ウォン(約2800億円)に上ると報じた。
ただ、足元の業績は半導体部門が下支えしている。野村証券は生産・販売中止が公表される前の11日のリポートで、300万台強の廃棄や1600万台の出荷がなくなる最悪のシナリオでも、2017年12月期決算は堅調と予想。今後はブランドイメージの悪化やサムスン離れを抑えられるかが焦点だ。
そのためには、徹底した原因究明が第一歩だ。対応が後手後手に回ったこともあって、サムスンに向けられる市場の目は非常に厳しい。同モデルの機能や製品自体の評価は高いだけに、エレクトロニクス業界に詳しい長内厚早稲田大学教授は「拙速な対応をせず、地道に製品開発をすべき」とする。
国内電子部品各社もノート7の発火問題を注視している。各社はハイエンド機で付加価値も高いノート7の販売に期待していたが、サプライヤーにとって同商品の生産・販売停止による影響は避けられそうもない。また不具合の原因によっては賠償の発生などもありうる。
リコール後の新製品で発火した事実は、電池を発火原因とするサムスンの説明に矛盾する。電子部品メーカーからは「ここまでくると根本的な問題があるかもしれない」(コンデンサーメーカー幹部)との声も出ている。
最近のスマホは大容量電池に急速充電するため、電池への負荷が大きい。負荷が電池の許容範囲を超え、発火事故が起きる場合もある。長内教授は「今回も電池と充電回路いずれかの問題と言うより、双方の相性が悪かったと考えられる」と指摘する。
サムスンはノート7に自社の電子部品を搭載しており、「サムスン製品の回路設計や組み立て工程が不明瞭なため、サプライヤー側で原因を想定しきれない」との声もある。リコール後の不具合はそれ以前と異なり、TDKの子会社の香港アンプレックステクノロジー(ATL)製バッテリーの不具合と指摘する一部報道もあり、情報は錯綜(さくそう)している。
電子部品の組み立て工程で不具合が見つかった場合、モジュールを納めるサプライヤーに部品の品質試験などが再度依頼される。そのため品質の担保や責任は複雑化し、個々の契約で大きく違うという。ATLの親会社のTDKは、コメントできる段階ではないとしながらも「影響はある」と警戒を強めている。
(文=梶原洵子、渡辺光太)
今後の注目点の一つはスマホ首位であるサムスンの失態が、販売シェアにどう影響を与えるか。敵失の恩恵を受けるのは米アップルか、中国ファーウェイか、それとも中国OPPO?その動向は日本の電子部品メーカーの受注を左右する要因になる。日本のスマホ向け液晶パネルメーカーへの影響も気になるところ。仮にサムスンのスマホが売れなくなり、サムスンが生産する有機ELパネルがだぶついたら・・・。
(日刊工業新聞第一産業部・後藤信之)
12日付の韓国紙・中央日報はサムスンについて、全世界で販売した180万台の交換や払い戻しなど直接的損失だけで少なくとも3兆ウォン(約2800億円)に上ると報じた。
ただ、足元の業績は半導体部門が下支えしている。野村証券は生産・販売中止が公表される前の11日のリポートで、300万台強の廃棄や1600万台の出荷がなくなる最悪のシナリオでも、2017年12月期決算は堅調と予想。今後はブランドイメージの悪化やサムスン離れを抑えられるかが焦点だ。
そのためには、徹底した原因究明が第一歩だ。対応が後手後手に回ったこともあって、サムスンに向けられる市場の目は非常に厳しい。同モデルの機能や製品自体の評価は高いだけに、エレクトロニクス業界に詳しい長内厚早稲田大学教授は「拙速な対応をせず、地道に製品開発をすべき」とする。
国内電子部品各社もノート7の発火問題を注視している。各社はハイエンド機で付加価値も高いノート7の販売に期待していたが、サプライヤーにとって同商品の生産・販売停止による影響は避けられそうもない。また不具合の原因によっては賠償の発生などもありうる。
リコール後の新製品で発火した事実は、電池を発火原因とするサムスンの説明に矛盾する。電子部品メーカーからは「ここまでくると根本的な問題があるかもしれない」(コンデンサーメーカー幹部)との声も出ている。
最近のスマホは大容量電池に急速充電するため、電池への負荷が大きい。負荷が電池の許容範囲を超え、発火事故が起きる場合もある。長内教授は「今回も電池と充電回路いずれかの問題と言うより、双方の相性が悪かったと考えられる」と指摘する。
サムスンはノート7に自社の電子部品を搭載しており、「サムスン製品の回路設計や組み立て工程が不明瞭なため、サプライヤー側で原因を想定しきれない」との声もある。リコール後の不具合はそれ以前と異なり、TDKの子会社の香港アンプレックステクノロジー(ATL)製バッテリーの不具合と指摘する一部報道もあり、情報は錯綜(さくそう)している。
電子部品の組み立て工程で不具合が見つかった場合、モジュールを納めるサプライヤーに部品の品質試験などが再度依頼される。そのため品質の担保や責任は複雑化し、個々の契約で大きく違うという。ATLの親会社のTDKは、コメントできる段階ではないとしながらも「影響はある」と警戒を強めている。
(文=梶原洵子、渡辺光太)
記者ファシリテーターの見方
今後の注目点の一つはスマホ首位であるサムスンの失態が、販売シェアにどう影響を与えるか。敵失の恩恵を受けるのは米アップルか、中国ファーウェイか、それとも中国OPPO?その動向は日本の電子部品メーカーの受注を左右する要因になる。日本のスマホ向け液晶パネルメーカーへの影響も気になるところ。仮にサムスンのスマホが売れなくなり、サムスンが生産する有機ELパネルがだぶついたら・・・。
(日刊工業新聞第一産業部・後藤信之)
日刊工業新聞2016年10月13日