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ドイツ銀行の破綻懸念は消えたのか?

専門家はこう見た
 ドイツ銀行の経営危機が市場に注目されている。同行の株価は史上最安値をつけ、一部では世界経済の危機につながるのではとの声も聞かれた。問題の端緒となった米司法省とのサブプライムローン市場での不正販売での和解金問題は決着が間近。破綻懸念は和らいでいるが、ドイツ銀行や銀行業界を取り巻く課題は依然として横たわったままだ。専門家に聞いた。


「円高、株安につながりやすい」


第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト 田中理氏
 ドイツ銀行の経営不安説は長いこと叫ばれており、欧州経済が抱える爆弾の一つとされている。直近では7月のストレステスト(健全性審査)、9月には米司法省が住宅ローン担保証券の不正販売を巡り、140億ドルの和解金の支払いを要求したことで金融市場が荒れる結果となった。

 同行がすぐに経営破綻するというのは極端な見方だろう。ただ、現在はリストラ策を進めている最中であり、収益体質の抜本的な改善策がまだ見えていない。

 このため、結果が出るまで不安材料が出る度に金融市場が荒れる展開が続くだろう。欧州発の金融不安がリスク回避的な動きにつながれば、日本経済にとっても円高、株安につながりやすい展開にはなる。

「破綻する可能性は極めて低い」


大和証券ストラテジスト 川瀬良美氏
 「ドイツ銀行が米国司法省から140億ドルの支払いを要求される」という報道が一人歩きし、市場のリスク離れが起きている。だが、ドイツ銀行が破綻する可能性は極めて低い。

 過去の制裁金の例を見ても、銀行の支払い能力を超える金額が要求されたケースはほとんどない。ドイツ銀行の引当金は55億ドル程度であり、その範囲内に収まると予想される。仮に140億ドル要求されたとしてもドイツ銀行の資本はバーゼル基準より厚い。支払いに耐えられるだろう。

 ドイツ銀行の事業体制を問題視する意見もあるが、金融危機後から着実に改善が進んでいる印象だ。今回の例は要求額が大きいので問題視されているが、同様の危機が再発する可能性は少ないだろう。

(川瀬氏=左と田中氏)
日刊工業新聞2016年10月7日「深層断面」から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
既にドイツ銀行と米司法省は54億ドル(約5500億円)への和解金の減額で合意間近といわれる。金融不安は確実に和らいでいる。だが、ドイツ銀行の本質的な問題は横たわったまま。根源は収益性の低さ。16年4―6月の利ざやは36億9200万ユーロ。前年同期から1割落ち込む。過去10年で株主資本利益率(ROE)が10%に達したのは1年だけ。ドイツ銀行だけの固有の問題か、そのほかの銀行を含めたドイツ経済全体の根深い問題が横たわっているのか。

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