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下町ボブスレーの溶接、気をつけるべきは歪み

五城熔接工業所の後藤智之社長に聞く
 五城熔接工業所は、下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会で部品の溶接を手がける。「大田区を盛り上げたい」との思いで2号機のソリの製作から参加している。プロジェクト初期から溶接を取り仕切る後藤智之社長に話を聞いた。

 ―溶接担当の会社は少ないそうですね。
 「東京都大田区内の4―5社で担当している。ソリは100点以上の部品を組み合わせるため、溶接を多くの会社で分散したい。興味のある会社はぜひ参加してほしい」

 ―加工で気をつけている点はありますか。
 「いかに歪(ひず)みを出さずに溶接するか、という点に気を使う。部品は組み立てて使うため、付ける位置と精度が正確でなければならない」

 ―間違っていた場合の対処法は。
 「溶接した部分を切って、削って、付け直す。本業で直し依頼がくることもあるため、対応はできる。ただ手間とコストを考えると作り直した方が早い場合もある。状況を見て判断している」

 ―今回製造する6号機以降の部品加工は何か変わりましたか。
 「ジャマイカチームが使ってくれることが決まったため、製造側の雰囲気が明るくなった。加工面では、慣れもあるが従来よりやりやすく感じた」

 ―プロジェクトは今後も続きます。
 「オリンピックで使ってもらえるというのがとにかくうれしい。今後、ボブスレー以外のモノを作ることになったとしても、大田区を盛り上げるべく協力していきたい」

丁寧さが強み



(五城熔接工業所の後藤智之社長)

 五城熔接工業所は鉄、ステンレス、アルミニウムの溶接を手がける。厚い金属から薄い金属まで、オールマイティーに溶接できる。「アルゴン溶接」「半自動溶接」「ロウ付け溶接」に対応。短納期の依頼も多いが、溶接部分の“きれいさ”にはこだわる。仕事の丁寧さが強みだ。

 必要な治具はできる限り社内で作るため、社内には旋盤などの各種機械が並ぶ。機械は全て汎用機。中学生の頃から家業を手伝ってきた後藤社長が一人で動かす。技術と経験を兼ね備え、短納期ながら精度の高い溶接を可能にしている。
日刊工業新聞2016年10月5日
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
 ボブスレーの軽量化という点でも、後藤社長がこだわる「きれいな溶接」が生きてくるような気がします。

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