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「AIの基盤作り、戦う土俵を選ぶべきだ」(日本IBM社長)

ポール与那嶺氏に聞く。「最適化する手法は日本が」
 ―まず景況感から。
 「海外情勢を含めて、予期せぬ事態が相次いでいるが、景気は大きく崩れてはいない。米国も景気は悪くなく、日米とも足元がしっかりしている。日本は為替の影響で企業業績が揺れたが、年末から2017年初頭にかけて、新しい芽が出ることを期待したい」

 ―海外情勢は予断が許さない状況です。
 「不確定要素が多い。米国は利上げ観測が広がっているが、11月に米大統領選もあり、そこまでは様子見。欧州は英国のEU(欧州連合)離脱の影響が落ち着いてきた。『中国はどうか』と聞かれればクエスチョンマークが付くが、大きく崩れないと思う」

 ―安倍晋三政権の経済政策の評価は。
 「海外からは『顔が見える政権』との評価が高い。3本の矢が云々言われることもあるが、私は『1000本の針』と表現している。ここ2、3年で企業の改革は一気に進んだ。地方でも『ROE(投資対効果)をどう上げればよいか』と質問を受ける。今までこんなことはなかった」

 ―成長投資では人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の合唱ですが、中身がよく分かりません。
 「テーマだけが突っ走り、結果が出ないことは多々ある。肝心なのは、現実的な効果を出すこと。例えばAIの基盤作り。日本はこれから作ろうとしているが、そこで競争するには巨額投資が必要。日本人の特性を考え、戦う土俵を選ぶべきだ」

 ―AIなどデジタル化の基盤で遅れると、挽回が難しいのでは。
 「日本はソフトウエア開発やビジネスモデルの立ち上げが得意ではない。だが、いったん理解すればキャッチアップする力を持っている。最適化する手法は日本が世界一だ。重要なのは(自前にこだわらず)現存するAI基盤などを活用し、そこに日本の企業や国が持つ膨大なデータを流し込み、業種ごとにソリューションを作り上げることだ。その競争はグローバルで始まったばかりだ」
(聞き手=斎藤実)

日刊工業新聞2016年9月28日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
一番最後のセンテンスをおっしゃる通り。まずは大量のデータを流し込んでみる。そこからじゃないとはじまらない。

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