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迫り来る米国発シェールガス由来の安価製品。日本の化学メーカーどう動く

三菱ケミカルと旭化成、水島でエチレン増産。包装材など内需堅調
迫り来る米国発シェールガス由来の安価製品。日本の化学メーカーどう動く

水島コンビナート

 三菱ケミカルホールディングス(HD)と旭化成は2017年に共同運営する水島工場(岡山県倉敷市)でエチレンを増産する。一部設備の改造で、年産能力を現状の49万6000トンから1万トン上積みする。化学大手は近年、国内設備を集約・閉鎖した結果、基礎化学品の需給が均衡してエチレンプラントは足元でフル稼働が続く。包装材などの堅調な内需もあり、今後は各社が生産能力を再び引き上げる可能性もある。

 水島のエチレンプラントは三菱ケミカルHD傘下の三菱化学と旭化成が折半出資する三菱化学旭化成エチレン(東京都千代田区)が運営する。増産に伴う投資額は数億円の見込み。17年5―6月の定期修理に合わせて、増産工事を実施する。

 工場の精製設備などを一部改造して、原料のナフサ(粗製ガソリン)から分解・精製して出るエチレンの生産量を増やす。一方、ナフサの投入量は変えないため、同じ基礎化学品のプロピレンの生産量が減少する。

 石油化学品は一般的にナフサを分解して、エチレン3割、プロピレン2割など一定の比率で生産する。今回はエチレンの割合を高めるが、市況に応じて元に戻せるよう弾力的な生産体制を築く。

 エチレンは汎用樹脂の原料で、包装材や容器、家電製品などに広く使われる。11年頃から新興国で石化設備の新増設が相次いだため日本からの輸出が成り立たなくなり、各社は生産再編に動いた。しかし内需が想定ほど落ち込まず、石油化学工業協会によると8月までのエチレンプラントの平均稼働率は、損益分岐点の目安となる90%を33カ月連続で上回った。

 一方、中長期的には米国のシェールガス由来や中国の石炭由来の安価な化学製品がアジア市場へ供給されることが予想される。石化業界は需給バランス維持に向けた難しい判断を迫られそうだ。
日刊工業新聞2016年9月20日
米山昌宏
米山昌宏 Yoneyama Masahiro
北米では、2017年からの4年間で一千万トン強のシェールガス由来のエチレンプラントが立ち上がってくる。近年、北米の天然ガス価格は、原油価格リンクというよりは天然ガスの需給で動いており、原油価格に関係なく$3-4/MMBTUとなっている。従って、ナフサを原料とするエチレンプラントの相対的な競争力は、原油価格により決定される。最近の1バーレル$40台前半の原油価格においては、ナフサを原料とする日本のエチレンプラントも競争力を持っている。北米のエチレンクラッカーが立ち上がる数年後の原油価格が日本のエチレン誘導体の競争力を大きく左右する。

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