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VW不正から1年。日産はガソリンエンジンにシフト、再評価されたマツダは?

自動車業界で、ディーゼル戦略を後退させる動き広がる
VW不正から1年。日産はガソリンエンジンにシフト、再評価されたマツダは?

次世代ディーゼルは大排気量化でNOX低減(マツダの現行2200ccスカイアクティブディーゼルエンジン)

 19日で独フォルクスワーゲン(VW)がディーゼル車で排ガス試験を不正に受けていた事件が発覚してから1年がたった。事件を受けて排ガス規制の厳格化が世界的に進む一方で、自動運転技術など車を巡る開発分野は急拡大し開発資源が逼迫(ひっぱく)。戦略上のディーゼルの位置づけが後退する動きが広がっている。

 「規制が強まっていてコストがかかる。開発したところで市場で受け入れられるのか。今後の投資で各社は大事な判断を求められるのではないか」。日本自動車工業会の西川廣人会長(日産自動車副会長)はこう指摘する。不正問題の発覚前からディーゼル車の排ガス規制の強化は進んでいたが加速している。規制対応がコストを押し上げる。

 現地報道によると仏ルノー幹部が、ディーゼル車が将来的に欧州から姿を消す可能性があるとの予想を示した。不正を受けた規制強化によりコストが高まっていることが要因という。

「ディーゼルに取って代わる技術だ」


 当のVWも不正発覚以降、経営体制を改め開発資源を電気自動車(EV)などの電動化技術に振り向ける方針を前面に打ち出している。ホンダ幹部もコスト増を理由に「いつまでもやるかというとそうではない」と指摘する。世界販売の電動車両の比率を3分の2とする目標に向けてディーゼル開発の優先度を下げる。

 日産自動車は今月開催するパリモーターショーで新たなガソリンエンジンを発表する。「ディーゼルと同等の燃料消費率になった。ディーゼルに取って代わる技術だ」(開発者)という。

 圧縮比を変えられる技術を使ってディーゼルの長所だった熱効率の良さをガソリンエンジンで実現した。別の日産開発役員は「ディーゼルからフェードアウトするつもりはない。開発は続けていく」というが、ディーゼルに逆風が吹く中で時宜を得た発表かもしれない。

複雑な心境も米国へディーゼル車投入へ


 国内クリーンディーゼル市場をけん引してきたマツダ。VWの不正問題を受けて国土交通省が実施したディーゼル車の実走行試験で、マツダの車種だけ基準値を満たした。

 敵失を機にマツダの独自技術が再評価された。ディーゼル開発の技術者は「VWは尊敬していただけに不正は残念だった。複雑な心境だ」と話す。規制が最も厳しい米国市場へのディーゼル車の投入に向けて開発を進めている。

 不正発覚から1年がたちディーゼルをめぐる環境は、マツダのように独自技術を持っていたり、高級車のようにコストを価格に転嫁できたりするメーカーにプレーヤーが絞られる圧力が高まっている。
(文=池田勝敏)
日刊工業新聞2016年9月19日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
日産・ルノーはどこまでEVの比率が高まるか。マツダにとっても業界でディーゼル比率が下がれば、結果的に車両のコストは高まるため、まさに「複雑な心境」だろう。マツダの今後のエンジン戦略は流れは大排気量化。ガソリン、ディーゼルとも燃費性能を飛躍的に高めるために、燃料を薄くして燃やすリーンバーンの度合いを高める。そのためには排気量を大きくした方が空気を取り込みやすい。

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