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走行経路の指示なくても動きます!目的地へ自律走行するAI搬送ロボ

ダイヘンが試作、17年度の実用化を目指す
 ダイヘンは目的地指示だけで、自律走行で荷物を運ぶ工場内搬送ロボット「AI(人工知能)搬送ロボット=写真」を試作した。あらかじめ入力した工場の地図情報をもとに、タブレット端末で目的地を指示すれば最適経路を割り出し、重さ700キログラム程度の荷物を自動で運ぶ。障害物はカメラやセンサーで検知して回避や停止行動を行い、横や斜め走り、旋回などの全方向移動で狭い通路も進む。2017年度の実用化を目指す。

 同社は一般公開して顧客ニーズを集め機能や価格など詰める。AI搬送ロボットは一般的な無人搬送車(AGV)で必要な走行経路を示すガイドテープや煩雑な教示作業が不要。簡単操作で搬送作業を自動化・省人化できる。

 サイズは幅1230ミリ×奥行き1550ミリ×高さ400ミリメートルで、質量550キログラム。走行速度は最大毎秒0・7メートル。ワイヤレス給電システムを備え、自動給電で24時間稼働できる。タブレットで進入禁止場所などの設定ができる。到着後はリフトで荷物を積み下ろす。

日刊工業新聞2016年9月13日



アーク溶接から総合ロボットメーカーへ


 アーク溶接ロボット世界首位のダイヘンが総合ロボメーカーへの飛躍を打ち出した。溶接ロボは世界展開するアーク溶接機のノウハウをベースに高付加価値化し、ライバルに10ポイント以上差をつける世界シェア30%を確保する。この溶接を軸に周辺工程の搬出入やバリ取り、検査工程などへのロボ提案から始めた。ダイヘンならではの付加価値提案がカギを握る。金子健太郎執行役員FAロボット事業部長に展望を聞いた。


―生産拠点に多数のロボを導入し、生産の自動化とショールーム化を進めています。
 「溶接ロボはアーク溶接技術というアプリケーションが強みとなっている。こういうアプリケーションを、溶接周辺工程を起点にどんどん生み出したい。六甲事業所(神戸市東灘区)のロボ生産ラインは部品組み付け、ネジ締め、バリ取りなど、多様な作業をロボットが担う。ロボの自社活用でアプリケーション力を向上する。魅せる拠点にして、周辺ロボの引き合いも増えている」

 ―六甲事業所に昨秋移転した半導体ウエハー搬送ロボ部門との協業も期待されます。
 「顧客やロボの使用環境は異なるが、生産や調達面の効率化だけでなく、コントローラーや制御などの開発でも連携効果が期待できる。両ロボットとも裾野を広げたい。シナジーの第1弾は今秋発売する再生医療の細胞培養などを自動化する6軸垂直多関節型クリーンロボットだ。食品分野向けも考えている」

 ―ロボット市場の動向とトレンドは。
 「生産自動化率を高めたい中国民族系自動車メーカーが、高品質化、歩留まり改善も狙って溶接ロボ導入に積極的だ。欧米、中米も堅調。日本は投資に少し慎重だが、中小企業や町工場で自動化推進や増産に向けた引き合いがある。昨秋投入した低スパッタで、高品質な溶接を可能にするパッケージシステムの売れ行きが好調だ。溶接電源とロボットの連携具合をシビアにモニタリングし、不良発生を先読みして未然に防ぐ予防保全も、自動車業界中心に好評だ」

【記者の目・周辺製品の生産拡大に注目】
 六甲事業所は2016年度内にロボットの生産自動化率を8割(現状3割)まで高める計画。ロボでロボを製造する同事業所はショールームの役割もますます担い、技術力強化とロボ販売増への貢献が期待される。FAロボ事業の溶接ロボ以外の販売割合は1割弱。日中の両拠点合計で18年度に現状比5割増の年1万5000台規模のロボ生産能力を計画し、この2割を溶接ロボ以外とする方針で、ここにも注目したい。
(文=大阪・松中康雄)

日刊工業新聞2016年7月20日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
搬送ロボットはなかなか競争が激しくなってきたがダイヘンがどこまで力を入れていくのか。産業ロボットメーカーの製品ポートフォリオ、顧客ポートフォリオが今後10年間でどこくらい変わっていくかに注目。

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