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設立4年のファッション感性を学習するAIベンチャーが、これだけ期待される理由

カラフル・ボード、資金調達で開発強化。ウエアラブル、ロボットに医療など広がる可能性
設立4年のファッション感性を学習するAIベンチャーが、これだけ期待される理由

カラフル・ボードはAIを活用してアパレル業界を支える(ワールドとの実証実験)

 カラフル・ボード(東京都渋谷区)は人工知能(AI)技術の強化に向け、技術者を増強する。このためACA(東京都千代田区)が運営するファンド「アジアグロース2号投資事業有限責任組合」などを引受先とする第三者割当増資により、1億4000万円の資金を調達した。この資金をテコに人材を確保。7月から技術者の増員を含めて現状の約10人から15人体制とする。
 
 カラフル・ボードは、ファッション感性を学習するAIを搭載したアプリケーション(応用ソフト)を軸に、アパレル業界の業務支援を展開している。現状はアパレルに特化した事業展開を進めるが将来的には、音楽や食などライフスタイル全般をAIで支援するビジネスを模索している。また、対応する端末はスマートフォン専用だが、ウエアラブル端末や人型ロボットへの対応も検討する。

 これを実現するためにもAI技術の強化は不可欠であるとともに、「海外を中心にAI技術者が取り合いになってきており、国内の大手企業でもAIを活用したビジネスを模索し出した」(渡辺社長)という現状から、早めの技術者確保が必要と判断した。今後は自社主催のAI技術の勉強会を開催するなどして人材確保に努めていく。同社はさらに、ファッション以外の分野でもAIを活用したビジネスを展開するための研究を、2015年内にも始める予定。音楽と食に関わる企業と連携し進める。

 渡辺祐樹社長は「このほかにもヘルスケアや医療など幅広い分野でAIが活用できるのではないか」と新たなビジネスチャンスをうかがっている。
(日刊工業新聞2015年05月14日 電機・電子部品・情報・通信面)

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 人工知能(AI)を活用してアパレル業界を支援する事業を主力として展開するカラフル・ボード(東京都渋谷区)。2014年に立ち上げた同事業を拡大させるための取り組みを加速している。3月末には数億円規模の出資を受け、その資金を人材の補強やコア技術となるAIの開発費用に充てる。「3年後には10億円規模の企業に成長していたい」(渡辺祐樹社長)という同社。ベンチャーがAIという先端分野のビジネスを切り開こうとしている。

 カラフル・ボードの事業の核となる技術は、慶応義塾大学、千葉大学との産学連携で開発したAIにファッションの感性を学習させるアルゴリズム(計算手順)。これを基にアプリケーション(応用ソフト)「SENSY」を開発した。アパレルの電子商取引(EC)サイトから利用者が求める情報を抽出するというもの。14年から米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」専用でアプリを提供している。

 渡辺社長は「15年いっぱいはビジネスモデルを確立することに注力していく」と明言。プロモーションを強化するよりも「いかに継続的に利用してもらえるアプリにするか」に重きを置く。9月までに、位置情報から近辺の店舗を探すなど、ECサイトから実際の店舗に誘導する「オンラインツーオフライン(OツーO)」機能などを追加する予定。そのほか、コーディネートを学習するといった機能も開発中だ。AIの研究や新機能開発の体制を強化するために技術者を中心に採用を行い、社員数を現状の約10人から約20人に増やす方針。

 「マーケティングから生産までアパレル業界のバリューチェーンを変える」と注力するのは、独自のAIを応用した同業界を支援するサービスの開発。アパレルECサイト内にAIを埋め込み、店舗のような接客をサイト内で実現できる機能を9月までに提供する。またECサイトだけでなく店舗を支援するサービスも検討。3月にはワールドの協力で、店舗の接客業務に新たな価値を付加するサービスの実証実験を行った。

 実証は店舗にAIを搭載したアプリをインストールしたタブレット端末(携帯型情報端末)を設置。来店客がタブレットを操作することで、店内にある商品から好みに合った洋服を探せる仕掛けだ。

 その一方で、巨大な海外市場への展開を見据えた戦略も描く。16年に本格化させる東南アジアを中心とした海外進出の準備に着手した。9月以降に英語や中国語など多言語対応のほか、米グーグルのOS(基本ソフト)「アンドロイド」を搭載したスマホへアプリを提供する。さらに、海外のアパレルECサイトを展開する企業との提携といった協業も積極化。既に米アマゾン・ドットコム傘下の米ショップボップ・ドットコムやイタリアのユークス・グループと提携しているが、今後は韓国、台湾などの企業と提携していく考え。

 カラフル・ボードが最終的に目指すのは、食や映像、旅行などライフスタイル全般をAIで支えること。そのために「16年3月までには2分野程度のリーディングカンパニーと研究できるような体制を整えたい」(同)としている。

 AIは国内外の大手企業も研究し事業化に前向きな成長分野。ベンチャーとの提携も模索している。同社は次に、どんな相手と手を組むのか。AIビジネスの成功モデルとして期待される。
日刊工業新聞2015年04月13日 電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
大学時代から人工知能を研究していた渡辺社長。AIの研究は日本でもこの1、2年でさらに加速してきたが、ビジネス化までどうつなげるかが課題。渡辺社長の「デザインの在り方を変える」という明確なビジネスミッションを持った若手は多くいる。大手企業も保有するAI技術をもっとオープンにしたり、ベンチャーへの投資で事業を活性化させるべきだ。

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