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東芝、東証に「特注」解除申請。経営正常化への一歩になるか

資金調達の自由度を高め半導体投資を急ぐ
東芝、東証に「特注」解除申請。経営正常化への一歩になるか

経営正常化に欠かせない特注解除に一歩近づいた東芝(橋本執行役上席常務)

 東芝は15日、不適切会計問題の再発防止に向けた企業統治改善策などを盛り込んだ「内部管理体制確認書」を東京証券取引所に提出した。東証は特設注意市場銘柄(特注)の指定解除に向けた審査をはじめ、年明けにも結論を出す。東芝は特注に指定され、市場からの資金調達が事実上できない状態にある。確認書の提出で、経営の正常化に一歩近づく。

 東証に確認書を提出した橋本紀晃東芝執行役上席常務は「緊張感を持って、真摯(しんし)に真面目に審査に対応したい」と語った。東芝は2015年9月に特注銘柄の指定を受けた。今後、東証の審査を経て管理体制に問題がないと判断されれば指定解除となる。

 依然として問題があるものの改善余地がある判断された場合は指定継続となり、再度審査を受ける。改善見込みがないとみなされれば上場廃止となるが、「その可能性は低いと考えている」(東芝社外取締役)という。

 東芝は不適切会計問題を受け、15年秋に経営体制を刷新し、社外取締役で構成する監査員会に内部通報窓口を設置するなど内部統制を強化。財務部門の業務プロセス改革なども進めてきた。橋本上席常務は「再発防止策の継続をグループ全体で徹底し、信頼回復に努めたい」と強調した。

 東芝の6月末時点の自己資本比率は7%と低水準。半導体メモリーなどの設備投資を継続するには、資本増強が欠かせない。このため特注指定を解除された後は、どう資金調達するかが経営の焦点となる。ある社外取締役は「増資も有力な選択肢として検討している」と話す。

 東証は07年に特注制度を導入した。現在、対象となっている東芝など4社を含め、これまでに計30社が指定された。このうち13社が審査を受け指定解除となった。残り13社は3社は審査を通らなかったため、10社は倒産など特注制度以外の理由で上場廃止になった。
日刊工業新聞2016年9月16日
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
東芝は16-18年度にわたりNAND型フラッシュメモリーに累計8600億円規模の投資を行う計画。今後、主流となる3次元構造(3D)NANDメモリーを巡って東芝は、韓国サムスン電子に生産、技術の両面ですでに水をあけられており、この投資を実行できなければ挽回は困難になる。東芝の16年4-6月期のメモリー事業は好調だったが、今後、円高が進めば利益は吹き飛ぶ。端的に言えば、今、東芝に必要なのは信頼回復とお金だ。資金調達の自由度を高めるためにも、一日でも早く特注銘柄の指定解除を実現しなければならない。

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